「株式会社ベネッセホールディングスの公開買付け」のニュースに対する当社の対応について

2023年11月10日、弊社運用ファンド(コモンズ30マザーファンド;以下コモンズ30ファンド)の投資先である株式会社ベネッセホールディングスより、同社の創業家がEQTグループ(スウェーデンに本社を置くプライベート・エクイティ投資会社)と共同で実施するマネジメント・バイアウト(MBO)について、同社の取締役会が公開買付けに賛同し、公開買付けへの応募を推奨することを表明されました。本発表を踏まえ、私たちのスタンスについてご説明いたします。

まず、MBOの内容は以下となります。
公開買付けの具体的な条件は、

  1. 普通株式1株につき2,600円で公開買付けを行う。
    この価格は、公表日前営業日比で45.13%、1ヶ月平均で45.90%、3ヶ月平均で42.39%、6ヶ月平均で41.23%のプレミアム(上乗せ幅)になります。
  2. 公開買付け期間は2024年2月上旬としています。

公開買付けにより非上場化するメリットについては、

  1. 教育事業におけるデジタル化の促進
  2. 教育事業におけるグローバル化の拡大・高度化
  3. M&Aの積極的な活用
  4. 非公開化に伴う意思決定のスピード化
    があると説明されています。

また、以下の同社からの資料の中で、創業家が近年の日本社会における教育や介護の課題が複雑化、多様化していく中で強い危機感を感じ、それに挑む決意が記されています。

福武總一郎氏及び福武英明氏は、現代日本社会の構造的危機に立ち向かい、旗振り役として教育と介護、ひいては日本の将来を牽引することは、社会で広く信頼されているブランド力、夢や理想の実現に向かって歩むお客様に寄り添って成長や課題解決を長年にわたり応援してきた実績、理念を共有する従業員を持つ会社だからこそ可能であると考えていたとのことです。

かかる考えの下、福武總一郎氏及び福武英明氏は、当社をその社会的使命を果たすための成長軌道に再び乗せるとともに、福武哲彦氏による教育事業開始という「第一の創業」、福武總一郎氏による介護事業開始という「第二の創業」に続く、当社の「第三の創業」として、デジタルとリアルの双方の世界において、当社が世界中のあらゆる世代が「よく生きる」ためのグローバル・プラットフォームとなることを実現するためには、現在の延長線上で事業を営むのではなく、教育事業のデジタル化や海外における教育事業の強化、介護事業の M&Aを通じた拡大といった更なる追加施策を推し進める等の大胆な施策の実施によって、当社がこれまで実行・検討してきた事業変革の内容を超えて変革を行うことが必要だという認識に至ったとのことです。(2023年11月10日「MBOの実施の一環としてのブルーム1株式会社による当社株券等に対する公開買付けの開始予定に関する意見表明のお知らせ」から引用)。

○株式会社ベネッセホールディングスのプレスリリース
https://pdf.irpocket.com/C9783/MH4b/viXK/qTQe.pdf

このリリースが出たのち、公開買付けの内容の吟味、公開買付け価格の適正性の評価、その他情報収集を行ったうえで、私たちコモンズ投信は臨時投資委員会を開催して対応を検討しました。
創業家がEQTグループの力を借りて、ベネッセグループ全員で第三の創業に臨む強い決意を感じ、その結果、公開買付け価格も適正な範囲と判断し、今後新たな事象が起こらなければ、同社の意向を尊重して対応
することとしました。

さて、私たちは、コモンズ30ファンドを通じて2011年7月から同社への投資を始めています。この13年近い期間を振り返りますと、まずは「ベネッセ」=『よく生きる』との企業理念に共感し、コモンズ30ファンドの5つの軸、収益力、競争力、経営力、対話力、企業文化を評価して投資をスタートしました。
元々は、教育・介護のリーディングカンパニーで競争優位の立場にあった同社ですが、東日本大震災の長引く影響、2014年の個人情報漏洩事件、コロナ禍などのアクシデントを経て、徐々にデジタル化や多様なニーズのある介護への対応が遅れるようになってきました。
こうした状況下、私たちは、抜本的な改革の必要性、第三の柱となるM&Aの必要性について同社と対話を重ねてきました。

また、これまでコモンズ30塾や周年イベントなどに同社の経営陣やIR(株式広報)の方々に何度も登壇いただきました。お客様と一緒に、直島(※)でコモンズ30塾を開催し同社の理解を深めるイベントも行いました。いずれも、参加者からは同社の長期的な成長を応援する声を多数いただきました。

個人情報漏洩事件の際には、同社の対応について子育て世代の多い当社のお客様からの声を直接、原田社長(当時)に伝えることもしました。厳しい声と応援する声が半々でした。また、事件直後にIRの方にコモンズ30塾に登壇いただき説明を伺う機会も設けました。

このように、私たちやお客様に会社が良い時期も苦しい時期も変わらぬ対話姿勢を持ち続けてくれた同社の株式非公開化は、短期的な株価の急伸にはつながりましたが、出来れば上場維持したまま、改革を進めてほしかったとの思いはあります。それでも今回は、創業家、グループ社員一同の改革に対する想いを尊重し、同社の「第三の創業」として、デジタルとリアルの双方の世界において、同社が世界中のあらゆる世代が「よく生きる」ためのグローバル・プラットフォームとなることに期待したいと思っています。

(※)ベネッセアートサイト直島は、瀬戸内海の島に世界中の子供たちが集える場を作りたいとの思いを抱いていた福武書店の創業社長福武哲彦氏(当時)と、直島に教育的な文化エリアを開発したいとの夢を描いていた直島町長三宅親連氏(当時)の思いが重なったことから生まれたアート施設

2023年11月29日
コモンズ投信株式会社
代表取締役社長兼最高運用責任者
伊井哲朗

リリースのPDF版はこちら
https://www.commons30.jp/cms/wp-content/uploads/2023/11/NewsRelease_20231129.pdf