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教えて!未来予想図~農・食分野のビジネスチャンスの広がり~

農・食分野というのは私たち生活者にとって、とても身近で関心の高い分野ですよね。まただからこそそれが抱える課題も広く認識されているように思います。広く根深い課題だけに、市民レベルのいい活動が生まれてもなかなか根本解決に近づかないもどかしさを個人的には感じていました。
8月末の月次レポートのコラム未来予想図ではシニアアナリストの上野さんがそんな農・食分野についてしっかりした明るい変化の兆しをまとめてくださったので興味深く読みました。

運用部/シニアアナリスト

上野武昭

聞き手:マーケティング部

横山玲子

 

(横山)様々な分野にまたがるレポートでしたね!
例えば生産者からの直販やこだわり野菜の宅配業者の出現などの、農・食分野の変化は、コロナ禍以前から始まっていたと思いますが、コロナで一気に加速した、という感じでしょうか?

(上野)コロナ禍の外出自粛にともなう「おうちごはん」の増加でスーパーマーケットはこれまでにないほど売り上げが伸びています。
また、密を避ける行動の呼びかけの結果、やはり人々の価値観にも変化が起こり、これまで以上に自然に触れあいたい、趣味の時間を大切にしたいと思う人が増えました。家庭菜園の延長で家の近所に農地を借りて土いじりを楽しむ趣味の園芸や野菜作りがとてもブームになっていて、ホームセンターでは種・苗や肥料など園芸用品が大変好調に売れています。

(横山)コロナがもたらしたニューノーマルですね。

(上野)横山さんの言う通りコロナの前から農業分野の流通の変革は始まっていました。生産者が野菜を直販する、また、ECサイトを活用する、など流通部分のインフラが整備されつつありますし、Oisixやラディッシュボーヤなどのネット八百屋とでもいいますか、プラットフォーマーの出現によって、JAに卸す一択しかない状況からの脱却が始まったというところでした。また、そういった新たなルートができた背景には、消費者のし好の変化もあると思います。標準品質で低価格を求める層と高品質高価格を許容する層で二極化が進んでいます。

(横山)私も宅配業者を通じて産地から直接野菜を買っています。多少割高かもしれないですが、旬の野菜がたくさん来るし、自分では買わない野菜もセットに入っているので楽しいです。

(上野)僕も自粛期間でオイシックスのミールキットを使い始めてみました。ほんと、楽しいですよね。
こうして価値観や構造の変化を伴う一過性のブームでは終わらないムーブメントが起こり出したので、農・食分野やその周辺のサービスに乗り出す民間企業も増えてきています。市民農園の運営に企業が名乗りをあげたり、道具やノウハウを提供する業者が現れたり。農業機械の中古市場も活況ですし、機械もガソリンからバッテリーにシフトするなど様々な企業がチャンスをうかがっています。

(横山)「生きる」に直結した分野なだけに影響する業界の裾野も広いですね!

(上野)企業の参入にはサプライチェーン(ここでは農家が上流-流通が中流-小売りが下流)の下流が流行っていることが必須条件です。つまり、最終消費者がいないと新しいお金が入ってこないから企業は参入しないんですよね。そこのハードルを乗り越えた今回のムーブメント。農・食分野を根本から変わると期待しています。また、農業生産の現場でも企業が入ってきて機械やプログラム、テクノロジーによる自動化、収穫量や売上の安定化が進めば、若者の就農人口も増えるなどしてくるでしょうね。もともと自然と向き合い食を支える仕事はやりがいもあって尊い仕事だと思うので。

(横山)「食」は生活の基本ですし、ここが衰退の一途という日本の現状は明らかに足元がぐらついていると感じます。「作る」も「食べる」もしっかり社会の一員として支えていきたいです。

(上野)私は変化が起こりそうな業界や業種を探すとき、イノベーションが遅れているところ、ビジネスモデルが古いままのところを重点的に見たりします。農業と似た構造では畜産業・漁業などは課題も多いのですが、ここはまだ他業種から参入するプレーヤーが少ないですね。

(横山)そういえば私の友達が釣りにハマっています!釣りブームが漁業変革の火付け役になるか!?

(上野)さて、どうでしょう。これらの分野も引き続き見ていきたいと思います。

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