― 今回はリサイクルの話でしたね。とても興味深くコラムを読みました。
これを書こうと思ったのは、ウクライナ問題のあとにいくつかの会社と面談をしてふと思ったことがきっかけです。リサイクルの話をするとき、GHG(温室効果ガス)削減という観点しか見られていないような気がするなぁ、と。確かに、いわゆるESG投資のEについては、それがもうGHG削減とほぼ同義になっているところがありますが、本来それだけではないはずですよね。
今回のウクライナ問題で資源というものの重要性を改めて考えさせられましたが、資源調達の制約をどう回避するかというのはすごく重要なテーマだと思います。
企業との面談で何社かに「リサイクルによる資源投入量の削減効果というものを数値化するような取り組みはされていますか」と聞いてみたんです。すると「それはやっていませんでした」と。続いて「確かにそれはありですね」という反応があります。企業との面談のときにこんな質問をすることで企業が新たな視点に気づいて、持ち帰って調べて、やってみようか!ともしなったら、対話による価値の共創の具現化ですよね。これは私の個人的な「対話による価値の共創」のテーマのひとつになっています。
― 自分では気づくことが難しい新たなる視点、とても良いですね。
こちらは少し前の日経の記事ですが、
こういう話が少しずつ聞かれる様になってきましたよね。調達にリスクがあって…とか、価格が上がって…という話。しかし、安定調達・価格変動リスクの低減という視点からリサイクルの話をされることはそれほど多くありません。
実際にそうした取り組みを進めている会社も意外とたくさんあると思うのですが、まだまだそういった会社に陽が当たっていないように感じています。
安定的な資源調達についていろいろ調べていたら経産省の資料が出てきました。
文字がびっしりでなかなか読む気が起こらないかもしれませんが…
「物資や資源の供給制約リスクが高まっていて、それを回避していく必要がある」というようなことが書いてあり、また「成長志向型の資源自律経済を目指すべき」という提言がなされています。
さらに次のページではリサイクルの4類型が示されています。
この中で一番重要なのは1番目の「資源の再利用・再資源化」だと思います。
「設計段階からリユース・リサイクルを前提とした製品の普及」とありますけど、これは以前にご紹介したプラスチックの話と全く一緒なんです。
プラスチックをリサイクルしようとした時、いろいろな種類のプラスチックを混ぜた設計が障壁になっています。例えばペットボトルは本体とキャップの素材が違うから別々で回収しましょう、というような話です。一方で、スーパーなどで目にする白い食品トレーはポリスチレンというプラスチックの単一素材になっているからリサイクル可能、というような。最初の設計からリサイクルのしやすさを考える必要がある。
それから、使用済みのものを回収するところでもハードルがありますよね。日本だとペットボトルの回収率は9割程度でかなり高いです。アメリカ・ヨーロッパでは6~7割、新興国に至っては回収されずに川に捨てられたりするものも多い状況です。どんなに技術があっても回収できなければそもそもリサイクルできない。どうやって回収するのかということも考えなければなりません。
飲料用のアルミ缶なども高いリサイクル性があります。あるアルミの缶材を手掛けている会社は統合報告書において、リサイクルによる温室効果ガス排出量削減という観点でしか触れていませんが、アルミの材料であるボーキサイト等の資源投入量を減らすという価値もあるはずなので、そうしたことも積極的にアピールしていったら良いのではないかと思っています。
また、昔からよくある議論で、「リサイクルはむしろ環境に悪いのではないか」という意見もありますよね。リサイクルに使うエネルギーの負荷、CO2排出を考えると、トータルではかえってリサイクルしない方がいいんじゃないかという主張ですね。
この議論自体も同様にGHGの観点だけであり、資源が無尽蔵にいくらでも調達できることが前提になっているような気がします。
世界情勢がこんなに不安定で、しかも希少資源が特定の国に偏っていて、地政学リスクがものすごく大きい。そういう経営環境のなかで「供給が途絶えたから、コストが上がったから、業績にダメージを受けました」というのでは事業構造として脆弱なのではないか、長期投資先としてはそぐわないのではないか、という気がしてしまいます。
統合報告書のときにも触れましたが企業努力が数値として開示されたときに投資家側がそれを評価する流れができないといけないのです。
結局今は投資家側がGHG削減にばかり目が行っているので、どの企業もそこに紐づけるような開示を行っている。投資家もそして消費者もそこだけしか見ていないという姿勢には疑問です。
でも、言われたからやるのではなく、特に希少金属など扱っているところは経営リスクを下げる話なので自発的にやってほしいとも思います。ウクライナ問題を受けて取り掛かっている企業もあるでしょうし、経産省のも5月に出たばかりなので、今後変わっていくかもしれません。
― 資源リサイクルがしやすい業界・会社などもあるのでしょうか?
まず第一に回収フローができ上がっていること。さっきのアルミ缶は非常に取り組みやすいと思います。あと給湯器とか空調機器のような据え付けが必要な家電も、新しいものを買う時にはそれまで使っていたものを業者に持っていってもらいますよね。
あとは、結局、設計から変えていかないと再利用したいパーツを取り出せないと思うんですよね。なので再利用したいパーツが取り出せる設計になっていること。
また、会社によっては長く使えるような設計をしているのだから、長く使い続けてほしいというメッセージを打ち出すところも出てきてます。
― 最近は製品の部品数を減らす流れで、全部アッセンブリで分解すらできないみたいなものもありますよね。iPhoneやテスラなども部品点数が少ないので、一回壊れたら廃車するしかない、というような。そういった思想のモノづくりにも揺り戻しが来るんじゃないかなと私は感じます。
確かに、そういう考え方は環境意識がより高まるであろう今後の世界においてはなかなか許容されない気がします。「使い捨て」は、安定して資源が調達できるという前提の下に成り立っている経済なので。
― 今、相当供給制約が出ているので、発想としてはそちらに行きやすくなってますよね。
インパクトを出せる大企業から、できることをやっていくのがいいですね。
― 結局、日本の国民性に「リサイクル」は向いているんでしょうか?
ペットボトルの回収率を考えてもポテンシャルは高いと思いますよ。
回収したらキャッシュバックなどの仕組みを導入したりするともっとリサイクルを進めることもできそうですよね。
ー 私も身の回りから改めてリサイクルをがんばってみます!今日はありがとうございました!