ザ・2020ビジョンの月次レポートのコラム「未来予想図」についにラーメン登場!そんな上野さんの着眼点が知りたい!ということで、なぜラーメンなのか、ラーメン(業界)の何が魅力なのか、話を聞いてみました!
運用部/シニアアナリスト
上野武昭
聞き手:マーケティング部
横山玲子
横山)ラーメン屋さんは個人商店の極みというイメージがありました。
株式マーケットに「ラーメン業界」というのがあるんですね!
上野)上場しているラーメンチェーンは意外と多くあります。今回ラーメン業界を取り上げたのは3つ理由があります。1つめは、内需企業であること、2つめは、ラーメン業界は市場規模が大きいこと、3つめは、上位企業群による市場占有率が低いこと、などです。内需の飲食の場合、市場は成熟しており、業界内で上位企業以外は淘汰されていく可能性があります。一方、上位企業群はシェアを高める可能性があり、現状で大きなシェアを獲得していなければ、出店拡大により、今後の大きな売り上げ拡大余地も残っています。実は、中古車販売の業界がこれと同じ構図です。
横山)なるほど、ラーメンが中古車と同じ構図・・・
上野)今回、内需企業に注目したのは、外需株が「市場の分断」(米中摩擦、ロシアのウクライナ侵攻、コロナによる行動規制など)により不透明要因が増してきているからです。
横山)相対的に内需株への信頼感が増した、ということですね。
上野)ラーメン業界の市場規模は、国内で6000億円程度の規模があり、店舗数は1万8000店舗程度あります。シェアトップの企業ですらシェアは6%程度とみられています。規模的に小さな企業(店舗数の少ないラーメン屋さん)が多く存在します。
横山)その統合が進む、ということは、個人商店のラーメン屋さんがどんどん大きなチェーンにとって代わられていくということですか?
上野)規模の大きなラーメンチェーンを、ハイデイ日高(主力は日高屋)、幸楽苑HD(同 幸楽苑)、力の源HD(同 一風堂)、丸千代山岡家(同 山岡家)、ギフトHD(同 町田商店)、物語コーポレーション(同 丸源)、などが展開しています。 もちろん、個人商店のラーメン屋さんでも人気店は残っていくと思われます。ただ、後継者問題もあるので、10年単位でみると、個人商店的なお店は残っていくのが難しいところも多く出てくると思います。コスト競争力も、規模の大きなラーメンチェーンのほうが、競争力がある場合が多いです。
横山)なるほど、ランキング上位のお店でも、知っているところと知らないところとあります。特定の地域に強いなどもあるのかもしれないですが、各シェアが大きくないことの表れかもしれないですね。
上野)ラーメンチェーンは中長期的な競争力を高めるために、人財を重視しています。ラーメン業界に限らず、どの業界にとっても、人財は大切ですが、やりがいをもって働いてもらうために、大手ラーメンチェーンでは、できる限り仕事の負荷を減らそうという試みをしています。ラーメンはスープが味の決め手なのですが、スープはセントラルキッチン(工場のような調理施設)でつくる場合が多いようです。セントラルキッチンのような、管理された工程で大量につくるほうが、品質がバラツキのない一定のスープを各店舗に提供できるようです。それから、お店では、調理の時、包丁を使わないように、食材は、カット済みなどの形で仕入れるようにもしています。また、できる限り、お店では油や火を使わないようにしているようです(唐揚げについては、油で揚げるのですが)。特に、若い世代に長く働いてもらうためには、包丁を使う、火を使うなどの負荷を減らすことが重要なようです。
横山)たしかにオペレーション面でも、衛生面でも、そのほうが合理的ですよね。
そういえばこの間ラーメン屋さんで面白い話を聞きましたよ。とんこつラーメン店のスープって鶏ガラなんですけれど(一同驚き、えー!豚骨なのに鶏ガラなの!?)鶏ガラを煮込むのは日本人じゃなくて東南アジアからの働き手でその人たちがコロナで帰ってしまったからその仕事をする人がいなくて困っているそう。スープを店で作ってるところもあれば工場で作った豚骨スープの素の素みたいなものを買ってるところもあり。あと鶏ガラもコロナの影響で値段が高騰しているらしくそれで最近ラーメン屋さん大変なんだ、と言っていました。
上野)おもしろい話ですね。鶏ガラと豚骨!?ブレンドする?それから、東南アジアの働き手の手助けが必要だったのですね。インフレの影響も大きいのですね。
上野)ところで、ラーメンの国内の市場規模は6000億円程度と大きな規模ですが、中長期的には海外市場での成長も期待したいところです。海外では、日本のラーメンを好きな人は多く、例えば、著名人では、米テスラのイーロン・マスクさんは、日本のラーメンやアニメが好きだとよく話題になります。
横山)そういう話なら、もっと海外に出ていったらいいと思いますが、海外で飲食が成長するのは難しいのですか?
上野)企業によっては、海外で大きく伸びているところもあります。力の源HDは23年3月期営業利益のうち海外からの貢献のほうが国内よりも多くなる見込みです。
横山)丸亀製麺も人気だとか?
上野)トリドールHDが展開する、うどんの丸亀製麺ですね。丸亀製麺は海外展開に積極的です。2011年に海外第一号店を米ハワイにオープンして、その後、海外で店舗を増やしていき、2021年には英ロンドンに出店しました。ロンドンでお客さんがいっぱい入っている様子がニュースになっていました。
横山)ラーメン業界5位のギフトHDはHPでも海外に積極的に展開している印象をうけますが実際はなかなか難しいのですね。
上野)ギフトHDですね。ギフトHDは2008年1月創業とまだ新しい会社で、海外展開については、今後、力を入れていきます。一方、力の源HDは1986年設立、トリドールHDは1990年設立の会社です。海外事業が収益の柱の一つに育ってきています。
横山)海外の麺屋もじっくりと現地の文化に馴染みながらお店を成長させていく必要がある、ということですね。ところで男の人ってほんとラーメンが好きですよね、なんでなんでしょう?
上野)難しい質問ですね。ラーメン愛?。ゲームやアニメと一緒で、オタク文化の一つかもしれません。ラーメンに対する熱量が高い。私が若いころは、お酒を飲んだら、シメのラーメンを食べるというのが、一つの行動パターンでした(今の若い人たちの行動パターンは違っているかもしれませんが)。
横山)ギフトHDはフランチャイズではなく、プロデュースとあり、ギフトの屋号を使わなくていい、加盟店もロイヤリティゼロ円で自由度もありそしてサポート全部します、と。これはどういうカラクリですか?ギフトのメリットは何ですか?
上野)開業をプロデュースする、コンサルタントのようなビジネスです。開業プロデュースをギフトHDに依頼するのは、法人オーナーもいれば、 個人オーナーもいます。法人オーナーでは、飲食の会社、不動産会社、IT企業などさまざまです。個人オーナーでは、スポーツ選手などもいるようです。
横山)ラーメン業界、たしかに熱いですね!
上野)ラーメンは、国内であれば、成熟した市場であり、勝ち残りの競争は激しいはずです。そのなかで、新たに開業したい法人、個人が多いということは興味深いです。ラーメンというのが、コアなファンを味方につけられれば経営を継続できるのかもしれません。コアなファンを中心に、ファンが広がっていく、ゲームやアニメと同じようなところがラーメンにもあるのかもしれません。来年にかけて、インバウンド(訪日外国人旅行)が今以上に増えてくると思われます。日本のラーメン店を訪れるお客さんも増えてくるといいですね。
横山)私こんなにラーメンの話をしたのははじめてです。
ランチはラーメン食べたくなってきました。今日はありがとうございましたございました。