おしえて!未来予想図~循環型社会の花形リチウムイオン二次電池~

おしえて!未来予想図、初登場のアナリスト古川さんに循環型社会の花形「リチウムイオン二次電池」について聞きました!

解説:運用部アナリスト古川輝之

聞き手:マーケティング部横山玲子

横山 今回はリチウムイオン電池についてですね

古川 使い切りタイプが一次電池。二次電池は充電と放電で繰り返し使える電池循環型経済のためにも今どんどん利用シーンが広がっています。水素と酸素を結合させて化学反応を起こす燃料電池というカテゴリーもあります。リチウムイオン電池は蓄電池というカテゴリーで今は特に EVの用途で大きなムーブメントになっています。

リチウムイオン電池とひと言でいっても幅広くて、様々な企業がまだどの材料でいくかを含めて上流にいて、それぞれが自社の製品を本流にするべくバチバチやりあっているのが今のこの業界。日本では2025年にEV分水嶺と言われていて、そこから一気に爆発するようなかたちで、各企業が動いています。リチウムイオン電池が本流になる、または、用途によって使い分けられて燃料電池が並走していくのかもしれませんが、そういう世の中になるのがなんとなく見えてきています。

横山 全固体電池というのはどんな電池なんですか?

古川 電池はプラス極とマイナス極の中を電子が動くのですが、電子が動くところは普通液体なんですけどそれが固体なのが全固体電池です。液体のときに必要なセパレーターというものがありますが全固体になると不要になる、そうすると今セパレーターを作っている企業はどうなるんだという話も出てきてますね。全個体についても、注力する企業も逆にその部門を売却する企業もあって、まだまだ定まらない状況です。

横山 今私たちが使っているリチウムイオン電池は固体なのですか?

古川 両方あります。ただEVに使うとなると車は容積が限られてるのでいかにコンパクトに耐熱性と寿命をアップできるかという点で全固体電池にスポットライトが当たっています。ただ全固体が本流にはならないと思ってます。

横山 それはなぜですか?

古川 事業展開のフェーズでいうと、まだ黎明期です。そのため成長フェーズ初期では、まずは電解質が液体のリチウムイオン電池から始まると思います。関連産業含めまずはそこにフォーカスした開発設計をしているからです。その後、成長フェーズ中期~成熟期では、様々なプレイヤーが凌ぎを削るため、経済合理性が鍵を握ります。そうなるとコンパクトで安全性も勝る全固体電池が普及するとみています。ただ、より環境性能を追求した場合には、電池廃棄やリサイクルを必要としないFCV(燃料電池車)にスポットがあたり、経済合理性や技術面でのブレイクスルーが起こると、ある時に取って代わる可能性もあります。

横山 なるほど。混沌としていますね。そして充電して使うモノは身の回りにもどんどん増えていますよね、携帯も自転車も掃除機も。

古川 そうですね。携帯やウェアラブルの端末にも入ってるようなコイン型の丸い小さい二次電池から始まって、次が EV、次はヘルスケアや医療の世界で伸びていくシナリオを描いている企業もあります。また実用化の第一歩として、工場の中の全自動ロボットの中にまず実装させようとしている企業もあります。

横山 工場の中のロボット?

古川 工場ロボットの電池を交換するとなると工場を半日とかまたは休日に止めないといけないんですね。電池の性能が上がれば交換頻度が下がる、というかほぼ半永久的に使えるので、ずっと稼働し続けられるという意味で生産性が上がります。
電池に(が)替わるというのは生産性向上と脱炭素というのがキーワードになると思います。

横山 生産性向上と脱炭素ですか。いいことづくめのようですが、鉱物資源の枯渇という話も聞かれますよね。

古川 そうなんです。今世界がリチウムを取りに行って鉱物資源は南米と中国、あとオーストラリアやインドネシアにもありますがそれがいずれ枯渇していくという。リチウムがどういうところから取れるかというと岩盤や塩湖(塩の湖)で、そこを掘削するんですね。そこに住んでいる人たちもいていわゆる生活用の水瓶が汚染または枯渇されるかもしれない懸念があり問題となっています。
今はまだEVがそこまで普及していないのですが、2030年はすごく普及している状態に向かっていて、そうするとリチウムイオン電池もリチウムに対する需要も強くなってきてて、今、足元の需要が30%ぐらいなのが7年後になると80%ぐらいの消費割合になるという想定がされています。
EVももしかしたら日本では水素が本流になるかもしれないし日本はまだどういう形に進んでいくのかが見えない状況が続いています。

横山 永久にある資源という意味では鉱物資源よりは水素に軍配が上がる?

古川 そうですね。今はそこまででなくても、今後世界がこぞって取りに行ってたらそこは永久ではなくなるし。水素であれば水の電気分解で発生させられるのでコストさえおさえられて経済合理性が成り立つのであれば水素は強いかもしれないですね。

横山 EVそのものの普及が言われるほどしないのではと指摘する人がいますよね。電池利用が結果的にいろんな産業の脱炭素に繋がるのは間違いないし、資源の課題があるとしても幅広い分野に広がっていくことには基本的には疑いがない。ただ電池の使用が大きく期待される「車」の分野において「EVが普及する」という仮説が成り立たないのであれば電池産業自体が発展しないのでは?

古川 たしかにそうですね。

横山 自分が電池メーカーの経営者だったら両睨みするだろうなと思います。日本の企業でもこの分野に様々な素材メーカーが関わっているけど電池メーカーだからといってEVのところに全部の経営資源を投入できますか?

古川 素材メーカーはリチウム電池の用途はEVだけではなく他にもありますし、セパレーターも他にも用途があります。なので各素材メーカーに関してはそこまで心配する必要がないかなと思います。おっしゃる通りパッケージ化して売る、例えばパナソニックなどはそういうリスクはあるかもしれないですね。でも彼らは社運をかけてテスラがいるアメリカの東海岸に工場を建てて巨額の投資をしている。だから彼らは日本をターゲットしていないにという意味では可能性があると思ってます。テスラはじめヨーロッパのGMやメルセデスなどもここに力を注いでるので今は EVを用途とした電池に関する開発は疑いの余地がないというのが業界全体としてコンセンサスになっている感覚を受けます。
各素材メーカーは恩恵を受ける。セパレーターやバインダーなど様々あるんですけど、彼らを今はEVが盛んなのでそこに資源を投入している。ただいろいろ見てると設備投資などにフルインベストメントしてる会社というのはそれほど多くなく様子を伺いながらやってるような感じを受けます。

横山 日本は電気自動車に関していろいろ課題があって世界的に遅れてるからその中でEV 自動車の普及ってどうなのっていう懐疑的にみる仮説も多いけどこれがヨーロッパにいけば前提が変わるということですね。

古川 正直日本においてはどうなるか本当にわからないですね。トヨタが力を入れている水素が日本では主流になるかもしれないです。

横山 日本だけでガラパゴス化して成立するんでしょうか?

古川 リチウムは汎用性が高く代替が効きますし、横展開が比較的容易です。そういう意味では移動手段の小型化によって電池の需要は必ず高まるのでたとえEVが思ったほどでなくても大丈夫でしょう。

横山 移動手段が小型化していくという話、ドローンや空飛ぶ車という話になってきたときには電池が最大の需要になることは間違いないですよね。道路を走る車では日本では課題が多いけれど。

古川 パーソナルモビリティ(ひとり乗りの自動車)ではもともと移動距離が限られている。それにはEVが向いている。みんなで長距離で移動するということでなく近距離の買い物等の移動でみんな一人乗りに乗るようになるということなのだと思います。

横山 二次電池のコストはどうでしょう?やっぱり値段が高いですよね?

古川 経済合理性がこの話をする時の一番のポイントで、唯一リチウムイオン電池が他の電池と比べて劣ってるのがコストなんです。鉛蓄電池やニッカドなど昔の電池と比べても劣後しています。コストの課題は緩やかに解消していくと思いますが2025年の EV分水嶺って言われる時期に解決してるかというとその時はまだだと思います。

横山 EV用途以外で二次電池の普及で劇的に変わりそうな領域はあるんですか?

古川 ロボットは結構需要がありますね。あとはウェアラブル端末。ただそこは恩恵を受ける企業のインパクトとして大きいかどうかっていう話になるとまた別の話かな、と。そこに対して利益を取れるかどうかわからないですし。あと、医療用途では患者さんの身体に埋め込んだ機械に入った電池を定期的に替えないといけないという課題があったのが電池交換不要となり人の体に対する負荷が少なくなるところはとてもすばらしいと思っています。

横山 なるほど!今後も身近な「電池」がどうなるか注目ですね!今日はありがとうございました!

 

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