ドローンが日常の中で活用されるようになってきていることを感じていらっしゃる読者の方も多いのではないでしょうか。
「いや、私の周辺でドローンを日常的に使っている人はいないぞ」と言われるかもしれませんが、例えばテレビの自然災害現場のニュース映像などでも「これはドローンで撮影しているな」と気が付くこともあるかもしれません。
そこで今回は、身の回りではあまり見かけないものの、産業・事業用途では徐々に広がりを見せているドローン市場の動向について運用部シニアアナリストの末山さんの解説です。

解説:運用部シニアアナリスト末山仁

聞き手:マーケティング部横山玲子

横山 私はドローンでサーフィンを撮影している動画を最近よく見かけます。

末山 ドローンは、法律上「無人航空機」と呼ばれていて、「人が乗れない飛行機で遠隔操作又は自動操縦により飛行することが出来る100グラム以上のもの」と定義されています。
主に娯楽用と産業用の2つの分類に分けることができますが、今回は産業用について解説していきたいと思います。元来は軍事用として開発されましたが、今では、カメラを搭載した空撮用ドローンや事業用の動画撮影など広く活用されています。

横山 我が家にあるおもちゃのドローンも趣味でサーフィン動画を撮影しているのも娯楽用のドローンということですね。それにしても家の周りでは飛ばして遊べる場所がなかなかありません!

末山 そうですよね。2015年4月に首相官邸屋上でドローンが発見される事件が発生しました。
これを契機にドローンに関する安全な運用ルールの策定、有効活用の在り方などの議論が本格化し、同じ年
に航空法が改正され、無人航空機の定義や飛行許可が必要となる空域、飛行方法などが定められました。
この航空法改正により2015年は「ドローン元年」と呼ばれています。2016年には、飛行操縦の技術に応じて、レベル1「目視内※・操縦飛行」、レベル2「目視内・自動/自律飛行」、レベル3「無人地帯での目視外飛行」、レベル4「有人地帯での目視外飛行」とレベル分けが示されました。
現在はレベル4の飛行は認められていませんが、2021年の航空法改正で2022年度中にレベル4の飛行実現を目指すことになっています。
(※目視とは、操縦者が直接肉眼により常時監視して飛行させること。)

追記→2022年12月5日レベル4が解禁されました

横山 ドローン市場はどのような構図になっているのですか?

末山 ドローンの世界市場では中国企業が圧倒的な強さを見せています。中でも際立っているのがDJIで、最新のテクノロジーを備えた性能と手頃な価格を武器に世界で圧倒的なシェアを誇っています。
一方で、中国が2017年に制定した「国家情報法」で、“いかなる中国の組織も情報提供で政府・共産党に協力しなければならない”と義務付けたことから、中国製ドローンを利用することで、日本国内の安全保障上重要となる施設などの正確な位置・画像情報などが、中国政府に筒抜けになるリスクが生じかねないことになりました。
これに対応するため日本政府は2021年度から全ての省庁、独立行政法人を対象に、セキュリティを強化したドローンの購入を義務付け、事実上、中国製ドローンは排除されることになりました。
国内で最も利用されている中国製ドローンが排除されることに加えて前述のレベル4の解禁により、国産ドローンの活躍の場が飛躍的に拡大することが期待されています。

横山 国産ドローン、がんばれ!ですね。日本ではどのような会社がドローンを作っているのですか?そして、末山さんの注目は?

末山 国産ドローンメーカーの中で、BtoB向けで活躍しているのはACSL以外には見当たらないと思います。彼らの認識では国内に競合はいないとのこと。ソニーなどもドローンを手掛けていますが、撮影向けに特化して細々とやっている印象です。

横山 ドローンが人を運ぶようになる日も近いでしょうか?

末山 ドローンの大型版ともいえる「空飛ぶクルマ」についても実用化に向けて技術開発、環境整備が着々と進んでいて、2025年の大阪・関西万博での実証に向けて準備が進んでいるようです。ドローンの市場拡大の動向と合わせて、投資対象企業の選定としても大いに注目していきたいと思います。

横山 楽しみですね!!ありがとうございました!

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