経営のスピードアップとエンゲージメントの向上を目指す|味の素株式会社との対話

<対談>前半
「経営のスピードアップとエンゲージメントの向上を目指す」

【登壇者】
梶 昌隆氏(味の素株式会社グローバル財務部IRグループ長)
伊沢千春氏(味の素株式会社グローバルコミュニケーション部レポーティンググループ長)
伊井哲朗氏(コモンズ投信代表取締役社長兼最高運用責任者)
末山 仁氏(コモンズ投信シニア・アナリスト)


<目次>「味の素」ASVレポートを読み解く
1:【キーノートスピーチ】2022年度版ASVレポートの読みどころ
2:【キーノートスピーチ】ASVレポートの制作にあたって注力したこと
3:【対談前半】経営のスピードアップとエンゲージメントの向上を目指す
4:【対談後半】ROIC経営と志の浸透


 

末山  まず梶さんにお聞きします。梶さんは金融機関から味の素㈱に転職されたという経緯をお持ちで、その意味では外部の人間として味の素㈱を見ることが出来るのではないかと思うのですが、実際に10年近く勤めて来られて、何か思うことはありますか。

   それまで食品・医薬品のアナリストとして、実は味の素㈱も担当していたのですが、実際、アナリストとして外部から見た味の素㈱と、実際に入社してみたのとでは、かなりギャップがありました。当然、良いところもあれば、課題もありました。
特に感じたのは、何かひとつ新しい取り組みをする場合に、承認プロセスの階層が多いということです。ただ、これをそのままにすると意思決定のスピードが落ちてしまうので、改革を進める必要があると思いました。

末山  新社長の藤江社長は組織のスピードアップを実現すると言っていますが、それは承認プロセスの階層を減らすことも考えているのですか。

   是非、ご期待下さい。直近でその成果が出たのが、ウクライナ危機でインフレが進行して原材料価格が急騰した時、足元で何に取り組むべきかをすべて見える化したうえで、全社で共有し、経営陣、従業員が一丸となって対処しました。その結果が、上期ならびに今期の成果につながっています。

末山  西井前社長も組織改革をかなり進められた方でしたが、藤江社長に代わって、さらに変わったことは何ですか。

伊沢  組織がフラットになったことですね。毎年、役員研修で経営の議論をするのですが、以前は社長席の前に役員が並んで座り、講義を聞くという教室のような形だったのを、社長、役員が車座になって話し合うという形に変わりましたし、経営会議も席は全く決められておらず、好きなところに座るというようになりました。これによって、より議論が活発に行われるようになったという印象を受けています。

末山  組織のフラット化がスピード感を生んでいるという解釈でよろしいですか。

   食品事業とアミノサイエンス事業で2つの事業本部があり、これまでは縦のラインが非常に強く、そのために承認を受けるうえでいくつもの階層を経る必要があったのですが、今は新しい変革のための取り組みがどんどん動いているので、組織横断的な承認プロセスが増えています。そのなかで、若い人たちも一緒に入ってきて、新しい取り組みを行っているので、組織的には非常に活気があります。

末山  社員のエンゲージメント向上をKPIに盛り込んでいます。それに用いるエンゲージメントスコアは昨年が61で、これを2025年に80、2030年に85まで上げることを公言されていますが、非常にチャレンジングな目標だと思います。勝算はありますか。

伊沢  エンゲージメントスコアの測り方は少しずつ見直しているのですが、この数字が上がっていくと測りにくくなるという側面があります。たとえば評価項目のひとつに、「自分のASVの取り組みを家族や身近な人に話しているか」というのがあるのですが、社員のなかには厳秘事項を扱っている人も結構いて、そうなるとなかなかこれ以上は上がらないということも考えられます。したがって、これからも新しい測り方などを考えながら社員のエンゲージメントを向上させるための努力を続けていく、ということになります。

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