ライフデザイン企業として100年後も事業を継続させる|バイク王&カンパニーとの対話

「バイクのことならバイク王♪」

どこかで一度はこのCMソングを耳にしたことがあると思います。1994年に前身となるメジャーオートを設立し、バイクの買取事業を展開。現在はバイクの買取事業だけでなく、電動モビリティの販売、中古バイクパーツや用品の取扱い、ブランド品の買取・中古販売など、幅広いラインナップを取り揃えることによって、お客様のバイクライフを支えています。

子供の手間がかからなくなり、経済的にも余裕の出てきた50代の人たちが「リターンライダー」として再びバイクに乗り始め、さらにはコロナ禍の新しいレジャーとして、バイクという乗り物が注目を集めています。

100年後も活躍し続ける、バイクライフ企業を超えた「ライフデザイン企業」を目指すバイク王&カンパニーの未来像、企業としての強みなどを、代表取締役社長執行役員の石川秋彦氏に伺いました。

* * *

株式会社バイク王&カンパニー代表取締役社長執行役員 石川秋彦氏

【聞き手】コモンズ投信株式会社運用部シニア・アナリスト 上野武昭

 

今は第12世代のバイクブーム

上野  最近、バイク人気が再び高まってきているように思います。ブームは一過性のもので終わることもありますが、このバイクブームはまだしばらく続きそうですか。

石川  バイクブームは昔から何度となくありまして、古くは1980年代の第1世代バイクブームですね。この頃は移動手段としてバイクを所有するというよりも、バイクを所有すること自体や、どのバイクに乗っているのかということが目的化していたと思います。

そこから幾度となくバイクブームがあって、今は第12世代のバイクブームと言われています。

今回のバイクブームは、ようやく沈静化へと向かいつつありますが、2020年からのパンデミックの影響により、密を避けられる乗り物としてのバイクが注目されるようになり、そこにアウトドアブーム、リターンライダーの増加、女性ライダーの増加などが相まって、移動手段としての価値が高まっているように思えます。さまざまな報道でも伝えられていますが、このバイクブームを契機にして、第2種原動機付自転車と呼ばれる、排気量50cc超125cc以下の需要が増加しています。このブームは比較的、息が長いのではないかと見ています。

第1世代のバイクブームでは、いわゆる50ccの原動機付自転車を中心としたファミリーバイクや、750ccの「ナナハン」が人気化して、その後はレーサーレプリカやオフロードモデルが人気を集め、その数年後には、ある俳優さんがテレビでお乗りになったことをきっかけにして、ストリートバイクがブームになりました。

さらに、通勤通学用途にビッグスクーターが人気化し、昨今ではキャンプやツーリングといった目的に合わせてバイクを選ぶ人が増えています。

上野  少し時間軸の長い話になるのですが、御社のコーポレート・ミッションとして「まだ世界にない、感動をつくる。」とあります。この言葉が持つ意味と、御社が何を実現した時、このミッションが達成されたことになるのでしょうか。

石川  私どもは100年後も活躍し続ける企業になることを目指しています。今はバイクの買取・販売を中心にして、お客様のバイクライフを支えることを仕事としていますが、将来はバイクライフを超えた、ライフデザイン企業になりたいと考えています。

具体的に、何を実現すればそうなれるのか、そこが難しいところではあるのですが、今、展開しているバイク事業のノウハウや強みを生かしながら、さらにバイク事業とのシナジー効果を創出するような新しい事業領域に進出し、次のステージに飛び出していきます

具体的には、モビリティ事業、レジャー・アウトドア事業、ライフスタイル事業が三本柱で、この3つの領域でサービスを展開することによって、コーポレート・ミッションである「まだ世界にない、感動をつくる。」を実現できるのではないか、というのが現段階における、おおまかな考え方です。

私どもはこれまでバイクの周辺事業を拡げてまいりましたが、今後はリユースの分野とそれ以外の分野を軸にして、自社で展開するか、フランチャイズで展開するかを区分しつつ、モビリティ事業、レジャー・アウトドア事業、ライフスタイル事業という3つの事業領域を強化していきます。

UXグロースモデルを構築する

上野  2025年を最終年度とする中期経営計画では、「バイクライフの生涯パートナー」というビジョンを掲げておられます。そこで御社のリテール台数を見ると、年齢別に2つの山があることに気付きます。15歳から24歳と、40歳から54歳がそれですが、一方で30歳から34歳の台数が少ないように思えます。この年齢層に対する働きかけは行っているのですか。

石川  私どもは20代の方々、そして40代を超えた世代の方々に高い評価をいただいているのは、まさにその通りです。

もちろん30代の方々もお見えになられますが、年齢的には社会人になって仕事に集中する時期であるとか、結婚などを契機にして生活環境が大きく変わる時期であったりもします。そのため、20代からバイクに乗っていた人でも、30代になってから一時的にバイクから離れてしまうという状況はあるのかも知れません。

バイクの愛好者を増やしていくことに関しては、これは運転免許制度の問題もありますので、私たちだけで努力をして何とかなるというものではないのですが、そうはいっても、やはりバイクという乗り物に親しみを持っていただくような環境をつくるのは必要だと思います。

そのためには、バイクを取り扱う販売店や、バイクに関連する商品を扱っている販売店の数が増えなければなりません。誰もが思い立った時に、バイクという乗り物に接することができる環境を構築することが、より多くの人たちにバイクを身近に感じてもらうきっかけになるはずです。

そのため私どもは現在、バイクの販売店の方たちに少しでも長く続けていただくために、私どもが買取で集めたバイクを一定期間、無償でご提供させていただくサービスを行っております。

また、整備技術の継承を目的とした整備協力ネットワークの構築や、顧客体験を増やしていただくためのUXグロースモデルの構築などを行っています。

上野  そのUXグロースモデルとはどういうものですか。

石川  バイクの買取、販売、メンテナンスといったサービスは、お客様から要望があった時に、個別に応対させていただくという、いわば受動的なサービスでした。それをUXグロースモデルにおいては、お客様とのタッチポイントの質と量を充実させる仕掛けを構築します。

そうすることによって、少しでもバイク愛好家の方々が増えていけば、私どもにとっても非常に大きな効果が期待できると考えております。

 

高市場価値車輌のマーケットは拡大基調

上野  そもそも中古バイクのマーケットサイズはどのくらいあるのですか。

石川  現在、全国に保有台数として登録されているのは、50ccから大型バイクまで含めると、1000万台を超えます。

排気量の内訳で申し上げると、ファミリーバイクと呼ばれる50ccの第1種原動機付自転車が約450万台。そして私どもが高市場価値車輌と定義している第2種原動機付自転車が約580万台です。

過去からの推移を見ると、全体の保有台数は減少傾向をたどっていますが、これは第1種原動機付自転車の台数が減少しているためです。これは恐らく、電動アシスト付き自転車の普及が原因ではないかと考えています。

ちなみに、私どもがメインで扱っている高市場価値車輌の台数は、逆に増加傾向をたどっています。これは、恐らく趣味・嗜好性が強いからでしょう。この分野のニーズは落ちることなく、年々増加傾向をたどっていくと見ています。

上野  街道沿いにはレッドバロンという店舗、あるいはホンダのドリームという店舗をよく見かけますが、御社との違いはどこにあるのですか。

石川  私どもはお客様から仕入れたバイクを整備したうえで、他のお客様に販売しております。この点は、他の2社にはない、圧倒的に差別化できるポイントです。

レッドバロンは50年以上の歴史を持っていて、全国300店舗を有し、売上高800億円という業界最大手です。新車販売を中心にして、バイクを購入されたお客様に対して修理や整備などのアフターサービスを充実させています。もちろん一部で中古バイクも扱っていますが、基本的には新車販売であり、アフターサービスを手厚くされているのが特徴です。

またホンダのドリーム店は本田技研が製造しているバイクの販売店で、基本は新車です。全国170店舗くらいを展開していて、50ccから大型バイクまでフルラインナップで販売しています。

逆にレッドバロンや弊社の場合は、特定のメーカーしか扱わないことはなく、国内外のメーカーならどこでも扱っている点が、ドリーム店との大きな違いです。

上野  御社の場合、買取に際しては個人のお客様の自宅までバイクを取りに行かれていますが、このような仕入れの方法を取っている他の買取業者はあるのでしょうか。

石川  かなり以前から、地域、地域で出張買取査定を行っている会社はあります。ただ、全国にネットワークを持ち、組織化されているところになると、私ども以外にはないのではないかと思います。

確かに、新車を扱っている販売店のなかには、それまでお客様が乗っていたバイクを、お客様のもとに伺って査定・買取するケースもありますが、それは主業務ではなく、あくまでもお客様の要望に応じて行ったサービス的な側面が強かろうと思います。この点でも私どものビジネスモデルは、他の会社と差別化できる部分です。

上野  バイクに限らず、中古品の流通ビジネスは常に買取と販売のバランスを取りつつ、両方とも量を増やしていくことがビジネスを大きくするうえで大事だと思います。そこにはどのようなノウハウがあるのでしょうか。

石川  入口である買取と、出口である販売のバランスをどう取るかについては、ノウハウと申しますか、改善活動をずっと進めていまいりました。

またバイク王は、幸いなことに、全国規模でサービスを展開しているため、現在に至るまで累計235万台の取り扱いをさせていただきました。その235万台の取り扱いによって、買取と販売のデータベースが豊富に揃っており、売れるものをどうやって買取り、それをどう販売するかを意識して取り組んでおります。

 

中古バイクに経済的価値を持たせる

上野  第1四半期の数字がやや物足りないように見えました。その理由は何ですか。

石川  今期第1四半期の決算においては、1年の計画としてリテールの拡大を成長のエンジンとし、出店を加速いたしました。売り場面積や展示台数、販売台数を増加するという戦略のため、バイクの買取り量の確保に注力したことが一因となり、仕入価格が上昇し、売上総利益率が低下してしまいました。それを踏まえて、この2月から売上総利益率の改善に取り組んでおります。足元の状況は、想定通りに回復してきたと思います。

上野  ご自身が経営をするにあたって、大切にしていることは何ですか。

石川  大きく3つございます。1点目はリスクマネジメント。コーポレートガバナンスやコンプライアンスを日々重要視しております。素晴らしいビジネスモデルと、高いブランドイメージが揃っていたとしても、管理体制が不十分だと、些細なことがきっかけで、全てが崩れてしまいます。そうならないようにするために、リスクマネジメントを重視しています。

2点目は高く掲げたミッションや達成すべきビジョンを持つことです。これらの実現を目指し、事業の方針や戦略などを企画立案し、実行します。また、実行し切れない場合は、実現可能な実行体制を作ることに、重きを置いています。

3点目は、広告の効果や営業活動における係数、指標、それらのコストなどの情報を、詳細に自ら収集・分析し、組織、あるいは現場の人間たちとは違った視点から、効果検証しています。

また、私が弊社の経営陣に対して求めることとしては、第1にゼネラリストであれ、ということです。浅くても、広い知識と経験を持つことで、俯瞰的に物事が判断できるようになります。

第2は現場を知ること。現場がお客様サービスの最前線ですから、バイク王の経営陣全員に、現場を知るよう常に申しております。

そして第3は会社、特に社員を愛しましょうということです。

上野  最後に、御社がお客様、あるいは社会全体に対して提供している価値は何でしょうか。

石川  私どもは中古バイクに経済的価値を持たせ、流通市場を活性化させたという評価を頂いております。バイク王は、バイクを中心にしたリユース・リサイクル事業ですから、その事業を通じて、持続可能な社会に貢献してまいります。

またバイクだけでなく、昨年からは車やブランド品のリユース・リサイクル事業にも参入いたしましたし、今年は中古バイクパーツのフランチャイズにも加盟しました。

弊社の経営理念には、「社会の発展に寄与すること」という一文があります。今後、モビリティ事業、レジャー・アウトドア事業、ライフスタイル事業を通して、なお一層、社会の発展に寄与してまいりたいと思います。

上野  ありがとうございました。

こちらのセミナーを動画で見るにはこちら↓

本コンテンツの内容は特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではありません。
また、特定銘柄および株式市場全般の推奨や株価動向の上昇または下落を示唆するものではありません。
サイト内のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。

最新情報をチェックしよう!