<トークセッション>
岡田紀子氏(シスメックス株式会社コーポレートコミュニケーション本部長)
伊井哲郎氏(コモンズ投信代表取締役社長)
末山仁氏(コモンズ投信運用部シニアアナリスト)
「コモンズ30ファンドと共に歩んだ10年の足跡」
伊井 シスメックスは、コモンズ30ファンドの組入銘柄のなかで最も値上がりした会社であり、ファンドの運用成績にも大いに貢献していただいたわけですが、御社自身もこの10年ですばらしい成長をされたと思います。この10年を振り返って、どのような点が印象的ですか。
岡田様 海外の売上がとても好調に成長しました。中国を新興国に入れるかどうかにもよりますが、中国を含め新興国全般が非常に伸びてきたと思います。今後、中国だけでなくインドネシアやインドなど、人口が多くヘルスケア分野が大きく伸びる可能性の高い市場がいくつもあるので、今後の成長に期待しています。
伊井 今、世界中で人口が毎年約7000万人ずつ増えていますので、多くの方々が検体検査など、ヘルスケア分野に対する関心がますます高まっていくでしょう。しかも、売上の約8割がグローバルシェアでナンバーワンという驚くべき成長ぶりですが、それを実現するには大変なご苦労もあったと思います。こうした苦難を乗り越えて成長し続けられる秘訣は何ですか。
岡田様 安定した売上が得られるビジネスモデルです。一度機械を購入していただくと、検査ごとに必要となる試薬だけでなく、サービス&サポート費用も発生しますので、それが安定した売り上げにつながっていきます。
しかもヘルスケア事業は、リーマンショックや米中貿易戦争のような大きな混乱が生じたとしても、影響を受けにくいという特徴があります。こうしたことが、厳しい環境でも成長できる秘訣だと思います。
伊井 これからの10年について伺いたいのですが、担当アナリストである末山さんは、シスメックスの今後10年を考えた時、どこに注目、あるいは期待しているのでしょうか。
末山 注目しているのはゲノム医療。それと血液検査のリキッドバイオプシーに期待しています。
また川崎重工と合弁会社をつくり、そこで外科医用の手術ロボットも手掛けていて近々、これがマーケットに出てくることが期待されています。これらを含めて、岡田さんとしては、どのような成長ストーリーをイメージしているのでしょうか。
岡田様 川崎重工とは、50%ずつの折半出資でメディカロイドという会社をつくり、手術支援ロボットの開発を進めています。これは2019年度中の発売をめざしています。現状、手術支援ロボットで上市されているのは米国企業の製品のみです。川崎重工は産業用ロボットで圧倒的な地位と技術力を持っていますし、私たちは医療分野でサービス&サポート、あるいは病院の先生方とのコネクションを持っています。それらを組み合わせれば、きっと面白いことができるのではないかと考え、日本初の手術支援ロボットの開発を開始しました。
伊井 この10年間、私たちはシスメックスに投資し続けてきました。岡田さんにはコモンズ30塾にも登壇していただきましたし、昨年は子供たちも一緒に、機械の生産工場であるアイスクエアにお邪魔しました。その工場は非常に清潔感があり、地元の方々がイキイキ働いているのが印象的でした。この時、参加してくださった子供たちに、「シスメックスに投資し続けても良いか」という質問をしたのですが、この時、子供たちの結論としては、「これからの社会を考えると、シスメックスは世の中になくてはならない企業である」ということでした。
末山 私も一度、アイスクエアに行ったことがあるのですが、本当に清潔感あふれる工場ですね。何といっても名前がアイスクエアですからね。○○工場ではなくアイスクエア。何となく働きやすいイメージが浮かんできますね。
伊井 岡田さんには、コモンズ投信への期待を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
岡田様 あの親子セミナーはとても楽しかった思い出として覚えています。あの時は工場の中を見学していただき、最後に血球計数器を製造する最終工程で部品をはめこむ作業を、親子でやっていただきました。非常に和気あいあいとした雰囲気が出ていて、とても良かったと思います。医療に関わる製品が、世の中でどのような役割を果たしているのかということもわかっていただけたようで、それは実に有意義だったと思います。
またこれからは、個別化医療が台頭してくるでしょう。遺伝子の変異を見て、各人にどのような抗がん剤が合うのかを把握して、個々人に合った医療サービスを提供する。それによって、健康で長生きできる社会を創るお手伝いが出来ればと思います。
伊井 現代社会においては2人に1人がガンに罹患すると言われています。シスメックスの血球検査を使って将来、どのくらいまでガン治療のサポートができるようになるのでしょうか。
岡田様 ガンといっても広いのですが、今は検体検査と遺伝子検査があって、身体から取り出した血液を検査する免疫検査で、ガンになった時に出てくるたんぱく質をマーカーで測るというのは、すでに世界でもあります。ただ、これからはガンになった時、遺伝子を検査し、診断に活かしていくことに、国立ガンセンターと共に取り組んでいます。
伊井 もうひとつ、エーザイと組んでアルツハイマーの分野でも研究を進めていらっしゃいますが、進捗状況はいかがですか。
岡田様 研究開発段階ですが、アルツハイマーを治す薬は、残念ながら今のところありません。ただ、進行を遅らせる薬はあります。そして将来は治す薬ができる可能性も大いにあると思っています。私たちのビジネスは診断のところに関わっているのですが、その診断には頭に針を刺し、脳骨髄液を取り出して脳の中のたんぱく質を測ることで、アルツハイマーであるかどうかを診断します。ただ、この方法だと患者さんの身体的負担が重く、費用も高額です。なので、それを血液から判別する方法ができないものかと考えて、血液中にしみ出てきた脳の中のたんぱくを測る研究を、エーザイと共同で行っています。ガンは徐々に治る病気になってきましたので、次はアルツハイマーの治療に貢献することによって、健康で長生きできる社会をつくることに貢献したいと思います。
伊井 ありがとうございました。