日経平均株価のPERが22.7倍。えっ?22倍って高いんじゃないの?

投信での資産づくりをメインにしつつ、株式投資のこともちゃんと理解したい人向けコラム

「トレーダーふっちー流の投資指標の見方」


今回トレーダーふっちーの投資指標の見方は前回に続きPER(=ピーイーアール、株価収益率)についてです。 

先ずはさらりとPERについておさらいしましょう。 

PER株価÷1株当たりの純利益とありました。 

「一つの目安としてPER15倍くらいが標準的な水準で、10倍台の前半だと割安、20倍台だと割高といえます」というのが教科書的な理解です。 

ではなぜPER15が標準的な水準なのでしょう  

一般的に考えれるのは東証1部全銘柄の過去20年の平均的な水準がこのあたりだったからと思われます 

では、PERが低くなる時ってどういったときなのか考えてみましょう。景気も良くない企業業績も下向き。当然、1株当たりの純利益は小さくなると予想されますPER株価1株当たりの純利益で割ったものですから、株価が同じなら分母の純利益が小さくなるとPERは高いままです。そうなると、株価は「割高」とみられて売られるので株価が下がるとPERは低くなりますさらには、投資家が、この先もっと景気が悪くなって、さらに企業業績も悪くなると思ってさらに株式を売れば株価安くなる。そうなればPERさらに低くなっていくそんな弱気相場になってしまったときのPER10倍台前半になることもあります。 

逆に、PERが高くなる時ってどういうときかです。景気良くなりそうだし、企業業績も上向きそう当然1株当たりの純利益も大きくなりそうと予想されます。この時分母の純利益大きくなると予想されるわけですから、株価が同じならPERは低いままです。そうなると、株価は「割安」とみられて買われて株価が上がるとPERは高くなります。さらに、まだまだ業績は良くなりそうだ、今のうちにもっともっと買っておこうとなれば、PERさらに高くなっていく。こういった強気相場になるとPER20倍台にまで高くなることあります。 

こういった風に、PERは景気が良くなったり悪くなったりする中で、企業業績が良くなったり悪くなったりすると予想することに加え、さらに投資家の投資マインドが強気に変わったりとか弱気に変わったりすることでその水準が変わるということになります。 

 じゃ、今の水準ってどうなの?って、日経新聞の投資指標欄をみると、先週末の日経平均株価のPERは22.6倍と載っています。えっ?22倍って高いんじゃないの?っていうことになります。 

PERは個別銘柄でみるのが一般的ですが、相場全体をみる場合は株価指数でPERをみることもあります。日経平均のPERは、日経平均株価に採用されている225社の今期の予想一株純利益の平均に対して、現在の日経平均株価22.6になっているという意味です。 

新型コロナの影響で外食をはじめ、サービス業などをみる限り景気はよくないし、ましてや航空会社や鉄道会社なんてさらにひどいことになっている。これから感染者も増えるかもしれない・・・先々どうなるかわからいというのが本当のところ。今の景気の現状をからすると、とても株なんて買えやしないというのが普通に思うところです。

それなのに、今のマーケットで日経平均株価新型コロナ感染拡大前の高値に迫る勢いです。個別銘柄でみると、すでに年初の高値を抜いて上値追いという銘柄だってあります。 

なぜこんなことが起こっているかというと、今のマーケットはきっと、もっと先のことをみているから、ということなんです 

この先、新型コロナの治療薬やワクチンの開発が進めば、きっとみんなが元の生活に戻ることができるだろうし、街にも活気が出てくる。人が動くようになれば、ものやサービスの動きだって多くなる、そうなれば景気だって今よりよくなるはず。そんなことを市場は予想しているんでしょう。 

PERに話を戻すと、今、表示されている日経平均株価PERは、今期(来年3期)企業の業績予想をもとに、日経平均株価に採用される各企業の1株当たりの純利益の平均22.6倍したもの。ざっくりと、来年3月の日経平均株価1株当たりの予想純利益1,040です。これを22.6倍すると23,600ということになります 

ではもっと、もっと先の来期(再来年の3月期)をみてみましょう。複数の証券会社のアナリストの予想をもとに計算した来期の日経平均株価1株当たりの予想純利益は1,600です来期の企業業績は、今期よりも5割くらい増えているとの予想です。きっと、新型コロナのいい治療薬もできていて、ワクチンも開発されていて、世界中で感染拡大も収まっているだろうし、オリンピック・パラリンピックだって予定通り来年夏には開催されるだろうしというようなことを想像しているに違いありません。 

今の日経平均株価を来期の予想利益水準からみていくとどうなるか? 

現在の日経平均は23,500ですから、PERは、23,500円÷1,600円=14.7となります。 

ちょうど「標準的な水準とあったPER15倍くらい」に近づくとの予想です。1に「PERのミソ将来の予想一株純利益を使うことにある」と申し上げました。こういうことなんです。 

マーケットは、今の利益水準ではなく、将来予想される利益水準をみているということ。 

だからトレーダーふっちーは今の株価水準は決して割高じゃない、いや、まだまだ業績の改善は見込めるだろうし、さらにはアフターコロナを見据えて新たなビジネスチャンスだって増えていることを考えれば、マーケット全体としてもさらに業績改善は見込めるはず。こんなシナリオです。 

では、次回の第3回は個別銘柄のPERについてお話しすることにします。 

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トレーディング部/部長
渕上 幸男Yukio Fuchigami

国内証券会社で営業職4年。外資系証券会社に転じ委託取引や自己取引のセルサイド・トレーダーとして10年。国内投信委託会社に転じ、証券会社への売買発注にともなうバイサイド・トレーダーとして3年。その後、国内証券会社や株式投資情報会社でヘッジファンド調査や株式市場調査に従事。2015年10月にコモンズ投信に入社。

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