いや、そうではなさそうです。もともとが「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」がグロース株に近い特性をもっているものの、今年に入って4か月だけをみると「コモンズ30ファンド」のバリュー株にも近い特性が出たということがあったのではないかと思っています。
そこのところを数字で確認してみましょう。
2つの系列の数値を比較するときに相関係数というものを使いますが、「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」を、期間別で、それぞれに、バリュー株とグロース株との関係をみてみます。
相関係数は一般的に、0以上+1に近ければ近いほど「強い正の相関がある」、0以下−1に近ければ近いほど「強い負の相関がある」、0に近ければ「ほとんど相関がない」とみます。
期間別の相関係数は以下の通りです。
期間 | ファンド | TOPIX | TPXバリュー | TPXグロース |
2021/1~2021/4 | コモンズ30ファンド | 0.93 | 0.91 | 0.51 |
ザ・2020ビジョン | 0.53 | 0.32 | 0.82 | |
2020/3~2021/4 | コモンズ30ファンド | 0.99 | 0.97 | 0.98 |
ザ・2020ビジョン | 0.92 | 0.83 | 0.97 | |
2016/6~2021/4 | コモンズ30ファンド | 0.92 | 0.52 | 0.99 |
ザ・2020ビジョン | 0.69 | 0.15 | 0.94 |
グラフ1)で示した2021/1~2021/4において、「コモンズ30ファンド」とTPXバリューの相関係数は0.91、TPXグロースとの相関関係は0.51。一方で「ザ・2020ビジョン」とTPXバリューの相関係数は0.32、TPXグロースとの相関関係は0.82です。
「コモンズ30ファンド」がバリュー株と強い正の相関があった一方、「ザ・2020ビジョン」はグロース株と強い正の相関があったことがわかります。
では、グラフ3)で示した2020/3~2021/4の期間ではどうでしょう。
「コモンズ30ファンド」とTPXバリューの相関係数は0.97、TPXグロースとの相関関係は0.98で、ともに強い正の相関がありましたが、
一方の「ザ・2020ビジョン」は、TPXバリューの相関係数が0.83、TPXグロースとの相関関係は0.97で、ともに強い正の相関が見て取れますが、ややグロース株に強い相関があることがわかります。
もう少し長い期間でみてみましょう。
グラフ5)は2016/6~2021/4で、約5年前の2016年に、英国が欧州連合(EU)から離脱(ブレグジット)するとの懸念から世界的に株価が急落した後の安値を起点に、今年の4月までを見たものです。
その間、トランプ米大統領の誕生や、米中貿易摩擦問題の激化など様々の出来事がありました。
米トランプ政権が強力な財政政策を推し進めたことや、またFRBが金融緩和政策を推し進めたことで世界的に景気拡大が続いたのですが、昨年からは新型コロナウイルスの感染拡大でそれまでの流れが一変しています。


グラフ6)は、その間のバリュー株とグロース株の差ですが、2018年まではバリュー株優位(グレーの部分がプラス)ですが、2019年以降はグロース優位(グレーの部分がマイナス)となっています。
これは、2018年までは景気拡大とともに米長期金利が上昇する過程で景気敏感株を中心に株価が上昇しバリュー株優位となりましたが、その後、景気拡大が一旦ピークをつけて景気後退に入った時期に、トランプ米大統領が2期目の再選を目指してFRBに相当な金融緩和圧力をかけたことで米長期金利が低下し、成長株を中心に株価が上昇しグロース株優位となったからです。
その間の「コモンズ30ファンド」と「ザ・2020ビジョン」はどういう動きになっていたのでしょうか。
グラフ5)からも、バリュー株優位の2018年までは「コモンズ30ファンド」が堅調な推移をみせていましたが、2019年に入ってからグロース株優位に流れが変わって以降、「ザ・2020ビジョン」がTPXグロース指数を大きく上回る好調をみせたことがわかります。
では、その間の相関係数をみてみましょう。「コモンズ30ファンド」とTPXバリューの相関係数は0.52、TPXグロースとの相関関係は0.99。「ザ・2020ビジョン」とTPXバリューの相関係数は0.15、TPXグロースとの相関関係は0.94です。
「コモンズ30ファンド」も「ザ・2020ビジョン」も、共にグロース株と強い正の相関があることがわかりますが、
一方で、バリュー株とは「コモンズ30ファンド」はやや正の相関がある、「ザ・2020ビジョン」はほとんど相関がないということがわかります。