前回のお話はこちら
福本 こどもと一緒に行く買い物でつい「そんなに高いものだめでしょ」って言うことがあると思います。親自身も価値じゃなくてまず値段から入ってしまっているところがあるのかなと思います。
高濱 価値に気持ちの焦点が当たっていくと、楽しい人生になっていくと思います。 誰がなんと言おうと僕はそれを買わないと言いきれる人になる。そういう価値観を指導する人っていうのは絶対これからの時代大事になると思います。自分の信念を貫くっていうときに、特に価格・偏差値・年収などわかりやすい指標がフォーカスされがちです。
うちの会社にも転職したいっていう人が来て、理由を聞くと「すごくいい給料もらえるんで~」とか言う。「いやそれ大変な仕事だぜ」って言ったら、やっぱり何年も続かず辞めちゃう。価格の本質が見えていないとそういう風に給料で踊らされてしまうと思う。
福本 ちょっとした買い物で価値のすり合わせをやっていくと、大人になった時の働き方や働く場所にもつながってくるっていうことですね。
高濱 すごく繋がると思います。そういう目を持って就活した子は踊らされることはない。自分の本当にやりたいことを考えて「この会社の人は本当にいい顔して働いている」「イキイキと社会貢献できそうだ」と思って就職先を選ぶなら良いんですけど、さっき出てきたような分かりやすい数値にすぐ持っていかれてしまう。かくいう僕の就活の時はそればっかりやっていました。休みをどれだけもらえるの、みたいな。
福本 今の話を聞いていてもうひとつ思ったことがあります。おこづかい帳をつけたり、買ったものの良い悪いの振り返りをしたりできたらいいねとは言いますけど、では、失敗してはいけないのか?ということです。こどもの時に100円、150円の買い物で失敗をたくさんしておいた方が良いのかなとお聞きして思ったんですが、先生その点どうでしょうか。
高濱 これはもうね、金言のひとつですよ。「こどもから20代ぐらいまではいろんな失敗の総数でむしろ将来が決まる」と思っていい。たくさん失敗して、その代わりちゃんと学んでいけばいい。むしろ失敗しないように失敗しないようにっていう方が問題だと思います。
講演会で話すネタですけれど、このまま放っておくと失敗しそうだって見えるときいっぱいあるじゃないですか。そこで「そっち行ったら転ぶよ」って言っちゃうっていう転ばぬ先の杖の子育てが、天才ルソーは一番残忍な行為だって言っているんですよ。ここで転んで、「痛ってぇ!二度としたくないよ」って本人が心から主体的に思うことによってケガしない子に育つのに、全部手を出してあげると、いざ自立したあと、さっき言った金額の魔術に惑わされて心を持っていかれちゃう。痛い目にあうことによって学べることが多いですよね。
福本 100円と150円の失敗ならいくらでも取り返せますしね。伊井さん、お金に関する失敗ってどういう風に捉えたらいいですか。
伊井 そういう意味では失敗はないですね、自分の価値判断ですから。小さいうちから価値判断をしていって、結果として「あ、自分間違ったな」って思えば、また次価値判断するときにそれは活かされていくという事です。これは僕もそうなんですけど、日常で生活してるとあまり自分の無意識の価値判断をもう一回振り返るとか、言語化することはあまりしないです。
親子で小さい時から「なんでこんな判断したのか」をもう一度考えてみて、それを次に活かしていくという会話ができてると、「あっ、うちのこどもはこういう価値を大事にしているんだ」っていうのがだんだん分かってきますし、 こども自身も価値判断が明確になってきますから、判断する時に迷わなくなります。そういう意味でのお金との向き合い方っていうのはすごく大事だと思います。
10へつづきます