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福本 次のテーマです。買い物にも良い悪いがある?というルール。ここにはお題として100円のオレンジジュースと150円のオレンジジュース、あなたならどちらを買う?という問いが出ています。こどもってすごく正直ですよね。自分で買いなさいと言うと100円のほうを選ぼうとするのに、お母さんが買ってあげるというと迷いなく150円のを取りますよね。
高濱 良いものっぽいですからねぇ、そっちのほうが。
福本 どうしてこういう問いが生まれたんですか
伊井 こどもたちに「100円と150円のオレンジジュースがあります」というと、何も言わないと今言ったように自分で買うか親が買うのかで分かれます。
でも100円と150円のオレンジジュースは何が違うの?と話した時に、「150円のオレンジジュースはペットボトルでリサイクルができて、自然環境にも優しい。もう一方のほうは安いけれど、リサイクルしにくいとか、働いている人たちが大変そうな感じ」というような前提で話をすると、こどもたちって実は大人に比べると正義感がすごく強いので、150円のほうを買う。従業員が楽しく作っていて自然環境にも優しい、という商品を選ぶ側面があります。そうすると価格以外のことで判断しているよねということになります。そしてそれは価値を考えるという事になるんですね。
コモンズでやっているこどもたちとのワークショップの中でも、この2年間ぐらいはオンラインでやってたんですが、「家の中で一番大事にしているもの持ってきて」とこどもに言うと、意外と親が想定してないものを持ってきます。すごく高いものを持ってくると思いきやそうではなくて、おばあちゃんと一緒に作った鬼滅の刃のカバンを一番大事にしています、と言ったりします。必ずしも親が高額なお金を出して買ってあげたものではなかったりします。一方で、今までの人生の中で一番後悔した買い物はなに?と聞くと、「友達が持ってたものが欲しくなって自分も買ったんだけど、実は全然使っていない」「なんとなくたくさん買ったけど使ってるのは一個だけ」というのがでてきます。こどもたちなりに買い物して後悔したものというのは、やっぱりあるんですよね。
これ聞いてみるとすごいおもしろいですよ。価格じゃなくて価値という事になりますし、これからどういう価値観で決めていこうかみたいなことを親子で話をしてみると、当然親子でも全く価値観が違うのでお互いに発見があるし値段に惑わされずに買い物ができるようになるというのをここの中でお伝えしたかったす。
福本 先生も解説の中で、同じ種類だけれども値段が違う2つを用意して親子で会話してみるのがいい、例えば親子でホームページ見て商品について調べてみるとかそういうことをぜひやって欲しい、という事を書かれていましたよね。
高濱 そうですね。まぁ今はホームページとかだと会社もいいところ見せるように作っちゃうからわかりにくくて想像しかできないと思うんだけども、「パートさんも含めて従業員をすごく笑顔にしつつ、ちゃんと食べていけて家を買ったりこどもを育てたりもできるような会社だったらいいよね」という風に何でも親子で想像してみるのはすごくいいと思うんですよね。個人的にはあらゆる買い物でこれは自分にとって良かったか悪かったかっていうのを言語化してみるのもすごくおもしろいと思います。
僕の場合、父と母が去年亡くなって、遺産の整理の時に「なんでこんなもんにこんなにお金を使っちゃったんだろう」「ぼられてるだけじゃん」というのがいっぱいでてきました。売ったら二束三文というようなものがいろいろ。そこはもう夢を売ったんでしょうけどね、「奥様にお似合いでございますよ!」みたいなね。
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