こんにちは。コモンズ投信マーケティング部の山本です。
2026年4月23日、雨がしっとりと降るなか、長野県軽井沢町発地にある「ほっちのロッヂ」を訪ねました。お会いしたのは、第17回コモンズ社会起業家フォーラムにご登壇いただいた藤岡聡子さんです。

今回の目的は、活動内容を知ることだけではありません。言葉だけでは受け取りきれない「ほっちのロッヂという“場”」を、実際に感じることでした。
■医療の場に息づく、「暮らし」の気配
まず印象に残ったのは、ここが「診療所」でありながら、その言葉だけでは語りきれない場所だということです。
敷地内には、大きな台所、アトリエ、森、本棚があり、手書きの新聞が置かれています。外来の患者さんが訪れ、訪問診療に出る医師や看護師が行き交う一方で、台所からはご飯をつくる音と匂いが漂ってきます。
医療の場でありながら、そこには確かに「暮らし」がありました。

■「関わりしろ」が生む、小さな選択
ほっちのロッヂで大切にされている考え方の一つに、「関わりしろ」があります。
整いすぎた空間ではなく、少しのでこぼこや余白があること。
支える人、支えられる人という関係に固定しないこと。
誰もが「自分で選べる余地」を持っていること。
好きな場所を選ぶ。
話したいことを選ぶ。
何かをつくる。
ご飯づくりを手伝う。
森の整備に関わる。
一つひとつは小さなことかもしれません。けれども、その選択の積み重ねが、その人の尊厳を支えているように感じました。

■「お看取り」のあとも続く関係性
特に心に残ったのは、「関係性が終わらない医療」という考え方です。
通常の医療サービスは、治療が終わる、あるいはお看取りをすることで一区切りを迎えます。しかし、ほっちのロッヂでは、その後も関係が続いていくことがあります。
大切な人を見送ったあと、台所を手伝いに来る方がいる。
森の整備に関わる方がいる。
手書きの新聞に言葉を寄せる方がいる。
制度や資格だけで考えれば、医療の役割はそこで終わるのかもしれません。しかし、人の暮らしはそこで終わりません。
説明のなかで伺った、こんな言葉が忘れられません。

「明日も生きていてもいいかな、と思える人が一人でもいれば、この場所には価値がある」
この言葉に、ほっちのロッヂという場の本質があるように思いました。
■小さな診療所から、町の医療を支える
ほっちのロッヂは、地域医療のあり方にも新しい問いを投げかけています。
2025年から、軽井沢町、軽井沢病院、医療法人オレンジが連携し、ほっちのロッヂの医師が軽井沢病院にも関わる取り組みが始まっています。
一般的には、大きな病院が小さな診療所を支えるイメージがあります。けれども、ここでは小さな診療所が地域の病院を支えています。
目指しているのは、目の前の医師不足を埋めることだけではありません。町全体で医療者を育て、町全体で健康を支える循環をつくることです。
それは、短期間で成果が出る取り組みではないかもしれません。けれども、中長期で地域に育っていく、とても大切な挑戦だと思いました。

■小さな関係性が、未来を変えていく
コモンズ投信は、より良い未来を信じて長期投資を行っている会社です。同時に、社会起業家の方々との出会い、対話、そして寄付も大切にしてきました。
ほっちのロッヂを訪れて感じたのは、社会をよくする力は、大きな制度や仕組みのなかだけにあるのではない、ということでした。
台所でご飯をつくる。
森を整える。
新聞に言葉を寄せる。
誰かの話を聞く。
そうした小さな関係性の積み重ねが、地域の未来を静かに変えていく力になるのだと思います。
ほっちのロッヂは、医療施設であり、福祉の場であり、アトリエであり、台所であり、森でもあります。

何より、そこは、人が人としていられる場所です。
支える人と、支えられる人。
その境界は、思っているよりもずっと曖昧です。
ケアとは、専門職だけが担うものでも、家族だけが背負うものでもありません。
私たち一人ひとりの暮らしのなかにも、きっと息づいているものです。
ほっちのロッヂで受け取ったのは、ケアを専門職や家族だけに閉じないための、静かな問いでした。
いつか、お仲間の皆さまとこの場を訪れ、ここに流れる空気をともに感じられたらと思っています。