おはようございます。渋澤健です。賛否両論ある東京オリンピックですが、そこには様々な大小なドラマがあることに間違いないですね。

さて、週末に個人的には別のドラマチックなニュースが入りました。

ETICを、およそ28年前の学生時代に創業された宮城治男さんの代表退任です。ETICのことをご存じない方もいらっしゃると思いますが、組織名は”Entrepreneurial Training for Innovative Communities”の省略であり、日本における社会起業家を数多く輩出している、まさにイノベーター組織です。

その組織を立ち上げた宮城さんは「日本の社会起業家の父」という存在である、とずっと思っていました。「社会起業家の父」と言われるAshokaBill Draytonさんの物静かなパッションと、なんとなく風貌も似てますしw。

コモンズ投信にとっても宮城さんは大事な存在です。コモンズ社会起業家フォーラムの初回を2009年に開催したときに、真っ先に登壇者について推薦を相談したのは宮城さんでした。初回のみならず、その後に続いたフォーラムに多くの素晴らしい社会起業家をご紹介していただきました。何回も宮城さんご自身の登壇を促したのですが、「自分は、そのような表に出る人物ではない」という謙虚なスタンスを尊重しました。

宮城さんとの出会いは、その5年ぐらい前ではないかと記憶しています。コモンズSEEDCapの前身であったSEEDCapの二年目の支援に(今ではこの分野では大御所になっている)駒崎弘樹さんがフローレンスを立ち上げたタイミングと重なり、助成しました。その関係で、宮城さんの創業時のパートナーである井上英之さんと知り合い、井上さんから宮城さんをご紹介していただきました。良いご縁は、つながるものですね。

その宮城さんが、ゼロの状態から今の存在まで育て上げたETICから退くということは、自分にとって結構なビッグニュース。そして、流石だなと感銘を受けました。

「ETIC」=「宮城」という今まで築いてきた存在から、ETICが更に組織として進化するために創業者が自ら退陣するご決断に敬意を示します。創業者が汗と涙を流しながら育てた組織を「自分のもの」というヒエラルキーで事が良く進む組織は結構あります。(コモンズの投資先企業に、このようなケースが少なくないです。)

ただ、この経営モデルだと組織は創業者の器を超えることができなくなる。(だから、一般的には、強烈なオーナーシップを発揮する経営者はサラリーマン社長と比べると、独立社外取締役を重視するガバナンスに意識していると思います。)

一方で、ETICという組織文化はヒエラルキーではない。けれども創業者の自分がいることで、そのヒエラルキーに依存してしまう傾向がある。だから、創業者である自分を超えるETICの進化への期待を込めてエグジットする決断されたと、こちらのインタビュー記事から読み取れました。やはり、タダモノではないな。

ずっと、昔。自分が長年のアメリカ生活から帰国して日本社会で働き始めた当時。経団連会館で本田宗一郎さんの講演を聴講する機会がありました。「ホンダ」=「本田」という存在の日本を代表する創業経営者です。そこで、印象に残った言葉がありました。「これからは、若い世代に任せなければならない。だから、自分は退く。」当時20代であった自分は痺れました。ETICでも痺れている若手が大勢いることでしょう。

宮城さん、今までどうもありがとうございました!
これからも、どうぞよろしくお願いいたします!

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