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伊井 この辺り(価値についてやお金の循環など)から親子で会話するのがちょっと難しくなると思っています。高濱先生、ここ何かポイントありますか?
高濱 こういうのはやらされているとつまらなくなるので当事者意識がポイントなんですよね。
一昨年くらいから、花まるのプロジェクトで大成功しているものがあります。これは僕ではなくて、ぶっ飛んだ若者が僕のところに来て「これやらせてください」と言うから「やれば?」と言って始まったやつなんです。
何かというと、おじいちゃんもおばあちゃんも亡くなって空き地になったところで農業をやります。小学校1年生から高校生まで十数人でなにか植えて育てる。もうそれ自体楽しいわけですよ。大きくなれ~みたいな。腐ってダメになることもある。ちゃんと育てばマルシェに売りに行くんです。こどもたちがかわいい顔で「僕たちが作ったニンジンです!買ってください!」と言うと普通50円ぐらいのものが200円ぐらいで売れたりするんですよ。(会場に笑いが起きる)
これは付加価値ですよ。その結果、結構な金額がたまるわけですよ。
このプロジェクトはここからが勝負なんです。このお金をどうする?というのをみんなで話し合う。これはもう真剣勝負で、「儲かったんだから分けようよ」と言う子もいるし、「カマがないからちゃんとしたのを買おうよ」とか、あと面白いのは「このニンジン小っちゃかったのは安い種だったからダメだったんだよ。高いのを買おうよ」という子もいる。種の方に注目するとはなかなかだなと思います。中には「私たちはお父さんとお母さんのおかげで既に食べられていると思います。困ってる子に寄付したほうがいいと思います。」みたいなことを言う子もちゃんと出てくるんです。正解はないですよ。でもとにかくガンガン言い合う。なんで言い合えるかのというと、このお金は私たちが稼いだと心から思ってるから。それで、そのお金を次に回していきます。
これはすごく良い取り組みです。みんな真剣勝負でやるし、上から下の助け合いや教え合いとかあってこれから絶対広がると思ってるんですよね。
21世紀型学力はプロジェクトで伸ばそうと言ってMost likely to succeedのような映画を使ったプロジェクトが流行ったみたいに、プロジェクトで真剣にやることで、数学も国語も仲間の付き合いも学ぶというのがいま方向性としてあります。小学生でもできるなと思って。
私が言いたかったのは、全然教えてないのにちゃんとさっきの4つのお金の使い方が出てくるんですよね。これは本当に面白いことで、そういう学びを、仲間うちでできるからどんどんやっていけばいいな、いろんな塾もやってくれないかなとか思います。家族でやるとしたらこどもが「このお金は私たち家族4人で手に入れたお金だよね」という自覚があるといいんです。
福本 あと、親ってつい「教えなきゃいけない」と思ってしまうと思うんです。それこそ投資や寄付となると教えられない、となってしまうんですけれども、そこはもう先生がおっしゃったように質問するだけで良い、と。
高濱 対話をすれば、じゃあ寄付ってどうやるのとなりますよね。今いっぱい寄付のサイトがありますね。そういうのを見ると、どこも寄付したくなるものばかりですよ。ある大社長さんが「俺もう寄付貧乏になっちゃったよ」というくらい。ここに寄付したいと思うものがいっぱい見つかります。返礼品や報告が来るものもあり、関わった感じが出ます。寄付サイトを活用するのは寄付の学び方のひとつだと思います。
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