使い回せるバッテリー 職人に刺さる『マキタ流』」を読んで

 電動工具から掃除機、まさかの電動アシスト自転車まで。バッテリーを起点に製品を展開するマキタの戦略が市場に刺さっている。足元の業績は原材料高などで一時落ち込んでいるが、反転攻勢のチャンスをうかがう。

日経ビジネス6月12日号 第2特集

コモンズ投信の伊井哲朗社長兼最高運用責任者(写真=竹井 俊晴)
コモンズ投信の伊井哲朗社長兼最高運用責任者(写真=竹井 俊晴)

 金融業界では、マキタを「電動工具のテスラ」と呼ぶことがある。海外の競合企業はエンジン式だが、マキタはリチウムイオンバッテリーをフルに使うためだ。コモンズ投信がファンドを通じてマキタに投資したのは2009年6月。今年で14年になる。我々が投資し続けているのは、マキタが世界的な競争力を持っていること、そして世界で人口が拡大していく中で今後も長期で成長を続けていくだろうと判断しているためだ。

 マキタの本社所在地は愛知県安城市。地方企業ながら海外売上高比率が80%を超え、世界の大手と肩を並べる存在感を持つ。会社自体はとても堅実。このあまり表に出てこない優良企業に目を付け、記事にしたのは素晴らしい。

 欧州市場でも非常にシェアが高いマキタだが、米国では競合に押され気味だ。米国人に話を聞くと、マキタは性能が良すぎて音が小さく振動も少ないため、DIYをやっている感じが出ないのだという。半面、国内では特に女性の認知度が高い。強力で軽量、コードレスの掃除機の人気は非常に高く、弊社でも使っている女性が多い。

 記事では「修理3日体制」など、マキタの徹底した顧客対応姿勢についても触れている。後藤昌彦・現会長が社長時代、社員に毎年、企業の信条や行動指針を表す「クレド」を手渡し続けていた。顧客にしっかりと寄り添う企業姿勢が隅々まで根付いているのは、こういう地道な取り組みの結果といえるだろう。

 ただ、記事でも触れていたが現在は成長の踊り場にいる。多くの製品を中国で生産してきたが、近年叫ばれている「中国リスク」もあって一部の生産拠点を欧州に移し始めた。サプライチェーンの見直しを含めて、構造改革を進めている。彼らには独自の強みがあり、今後、回復していくはずだと考えている。

 技術力、製品のクオリティーの高さをもって地方企業が東京ではなく世界に打って出る。かつてテレビをはじめとする電化製品もそうだったが、「工具」という領域で海外大手と対峙するマキタの姿に多くの読者は勇気をもらえるのではないだろうか。(談)

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