味の素㈱との対話| 味の素グループの人的資本戦略に迫る(講演要旨)

味の素株式会社は、コモンズ30ファンドを通じて12年間、投資しています。「味の素」といえば食品・調味料のブランドとして広く知られていますが、実はヘルスケア領域にも非常に力を入れています。とりわけABF(味の素ビルドアップフィルム)は半導体製造に不可欠な素材で、グローバルシェアでトップを占めており、足元における半導体需要拡大による恩恵も、しっかり受けています。
またヘルスケア部門においては、CDMOと言われている「医薬品受託開発製造」や、医療・再生医療用培地の製造、遺伝子治療のCDMO企業を買収するなど、一段と体制強化を進めています。
経営指標としては、2030年のROE20%、ROIC17%達成を目標に掲げており、今後の動向が注目されます。
これらを支えるのはすべて「人」です。今回は、味の素グループの「人的資本経営」を中心にして、ディスカッションを進めてみました。
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<講演>
味の素グループの「人的資本」に対する考え方
味の素株式会社人事部グローバル企画グループマネージャー 河村博司氏

味の素グループの無形資産の中における人財資産は、技術資産と顧客資産をつないでイノベーションを生み出すための中核的な存在です。
味の素グループには、グループが目指すパーパスに共感して集まってくれた従業員が大勢います。その中で、従業員自身のやりたいことと、会社としてやりたいことの重なる部分が見つけられると、モチベーション高まり、自ずとさまざまなことに挑戦し、力をつけ、多様な経験属性を持ったチームとなります。この多様性を持ったチームが一緒に成果を出すことで、社会価値と経済価値の両立を実現しています。
そして、このサイクルをサポートするのが、従業員と、その家族のウェルビーイングであるということが、大きな考え方のフレームワークであり、人事の施策と同様に、 「会社と人財を志でつなげる」、「戦略と人財を挑戦でつなげる」、「グローバルで多様な人財をつなげる」、「Well-beingと従業員をつなげる」という4つの軸で人的資本を整理しています。

まず「志」ですが、味の素グループは遠心力が働きやすい環境におかれています。これは会社のプロダクトの幅広さでご理解いただけると思うのですが、それこそ冷凍餃子やカップスープなど単価が100円、200円というものから、遺伝子治療、半導体などの電子材料まで広く展開しています。しかも、31の国・地域に120を超えるグループ会社が存在しています。
そのため、ベクトルが異なりがちな従業員を束ねるための求心力が必要であり、それが味の素グループの“Our Philosophy”と位置付けております。

具体的に申し上げますと、味の素グループとして実現したいパーパスがある一方で、従業員一人一人が実現したいパーパスがあり、人によって大きいか小さいかの違いはありますが、両方の重なる部分があります。それを言語化することで、「あ、自分は味の素グループでこれをやりたいんだ」という内発的な動機付けが強まり、それが「挑戦」につながっていきます。これをワークショップという形で展開していて、2024年度は85のグループ会社に展開できました。

こうしてモチベーションが高まった従業員が、どのように挑戦していくのかですが、キャリアを例に挙げると、CDP(キャリア・ディベロップ・プラン)を重視しています。これは従業員がどういったキャリアを描きたいのかを言語化したうえで、上司と認識合わせをします。このようなプロセスを通じた異動配置の検討、さらに公募制度という仕組みを通じて、従業員が描いたキャリアを実現する支援をしています。現在、味の素株式会社の異動の約半分が、自分で描いたキャリア通りの異動が叶っており、この取組みを海外でも展開しています。

そして、挑戦している人が大勢集まることで形成される「多様性」ですが、味の素グループでは世界中にあるリーダーポジション、つまりこれは大事だよねと認識されているポジションに対して、1年後、3年後、あるいは5年以内、8年以内という時間軸で切って、後継者候補をつくっています。そして、この後継者候補の母集団を形成するうえで、日本では女性活躍や、国際間異動、キャリア採用などに力を入れています。

4つの軸の最後は「ウェルビーイング」ですが、「味の素グループで働くと自然と健康になる」ことをキーワードとして、グローバル展開をしています。ブラジルやタイ、ベトナムの社員食堂では健康に配慮したメニューを提供したり、インドネシアでは生活習慣病の予防をサポートする独自のアプリを開発して、ゲーム形式で従業員の健康を改善するといった取り組みをしたりしています。

このように、志、挑戦、多様性、ウェルビーイングという4つの軸で取り組みを進めた結果が現れるのが、働きがいや組織への愛着(エンゲージメント)を測る調査“エンゲージメント・サーベイ”のスコアであると考えています。ASVレポートにも掲載していますが、2024年度は各項目の平均点が76点でした。そして、この結果が味の素グループの売上や事業利益にどこまで効いているのかを見ていくと、どうやら志の共感と挑戦は売上高に影響がありそうですし、顧客志向と生産性の向上は売上高と事業利益に影響がありそうだということが分かります。

毎年、このサーベイを行うなかで、見え方が変わってくることもあるのですが、何回行ってもある程度、似たような項目と傾向が出てくるものがあります。たとえば志の共感などはそのひとつですが、因果関係は証明できないものの、味の素グループにとっては何かしら重要な意味を持つのだろうということで、4つの軸を中心にして、サーベイのスコアを上げていくことが味の素グループの人的資本を強くすると考えて進めています。

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