コモンズ投信の源流から「新しい資本主義」へ流れていること

おはようございます。渋澤健です。

旧知の友が運営事務局を務めている政策分析ネットワークの政策メディアというウェブTVのご案内をメールでいただきましたが、ゲストがなかなかハイレベルで、良い内容を無料で視聴できます。ホストは、竹中平蔵さんで、私が真っ先に視聴したコンテンツは「第70回 新しい資本主義の実現に向けて」です。ゲストは私が有識者メンバーを務めている「新しい資本主義実現会議」の山際大郎担当大臣でした。

高祖父の渋沢栄一が日本に導入した資本主義の原点である合本主義のエッセンスとは「一滴一滴の滴(しずく)が大河になる」ことです。少額の金銭的な資本が寄り集まれば大資本になり、社会が必要としている様々な事業を発展させることができると栄一は考えました。

ただ、栄一が大事にしていたのは金銭的な資本だけではなく、「一人ひとりの想い、一人ひとりの行い」という滴もあったと思います。つまり、人的資本の滴が寄り集まれば、時代を民から変革できる大河になる。これが、渋沢栄一自身が描いていた「大河ドラマ」です。

したがって、私は現在の「新しい資本主義」が目指すべきところとは、金銭的資本の向上を否定すべきではないものの、同時に人的資本を向上させることだと思っています。要は、「と」の力です。

岸田総理の様々なご発言、また、今回の政策メディアに登場されている山際大臣の言及で、「人的資本」「人への投資」を新しい資本主義のど真ん中に置いているというところがわかります。

しかし、現実として、日本企業は「人への投資」を必ずしもしっかりと実践していなかった。これは、大臣が提示されたデータでも示されています。

ただ、企業が人へ投資しなかった理由が、投資家へ配当を支払ったからだという見解については私の考えは異なります。

特に、コモンズ投信のような長期投資家が、投資先企業の研究開発・能力向上など人への投資を軽視する訳がありません。賃金も、単年度的には「費用」かもしれませんが、長期的な持続可能な価値創造の側面では「投資」であると私は長年主張してきました。

投資家が求めたのは、企業が開発研究や人材育成など未来への設備投資をせずに現金をため込んでいるだけであれば、投資家に配当として還元してくださいというロジックです。人への投資「か」株主還元ではなく、ここでも企業へ求めているのは「と」の力です。

また、今回の竹中平蔵さんと山際大臣とのやり取りで確認できたことは、企業の非財務的な価値の可視化が「新しい資本主義」の議論で展開されるということです。コモンズ30ファンドを設定した14年ほど前から提唱し続けてきた「企業の”見えない価値”の可視化」について、とうとう政府の政策のど真ん中で議論されているということは感慨深いです。この時代の潮流について、今年は注目しておいてください!

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