コモンズ30ファンドの寄付プログラム「コモンズSEEDCap」第17回の最終候補者3名が決まりました。
2026年5月14日(木)に最終候補者それぞれの想いを伝えるプレゼンテーション動画を公開しました。
5月20日(水)に開催した座談会では、事前にいただいたご質問を中心に、最終候補者の皆さまから「目の前にある現実」と「これから叶えたい未来」について語られました。
◎登壇者紹介◎
・尾中 友哉さん(認定NPO法人 Silent Voice 代表理事)
聴覚障害のある子どもたちに向けた「デフアカデミー」などを運営し、教育の機会保障と社会での活躍をサポート。
・小嶌 不二夫さん(株式会社ピリカ 代表取締役)
ゴミ問題の解決を目指し、ポイ捨てゴミ調査や完全AI自動のゴミ回収ロボットの開発に取り組む。
・平井 登威さん(NPO法人ココテリ 理事長)
ご自身の経験を原点に、精神疾患の親を持つ子ども・若者のためのオンライン相談や居場所づくりを行う。
<尾中さんへの質問>
■Q.ろう学校やデフアカデミーが近隣にない地域で、コミュニケーションを学ぶ機会のない子どもたちに対し、社会や制度はどのように教育機会を保障できるでしょうか?
(尾中さん)
耳の聞こえない子どもは1,000人にひとり生まれますが、その親の約9割は聞こえるひとです。そのため家庭内で十分な意思疎通ができず、会話に取り残されてしまう現実があります。
滋賀県のように、ろう学校が県内に1校しかない地域では、遠方のため通学が難しく、地域の普通校に通わざるを得ない子が増えています。一方、地域の学校側も受け入れ経験が少なく、聞こえるひとの会話スピードやグループワークについていけない事態が起きています。
また、わたしたちが運営する「デフアカデミー」は、子どもが分散している地域での立ち上げは困難です。
そこで、現在はオンラインで放課後の居場所を作り、平日は通えなくても月に1回は集まれるコミュニティづくりを大阪で進めています。この運営方法を国のルールメイキング(制度変更)につなげて全国に広げ、学校現場への支援も行っていくこと。これこそが、社会の中で聞こえないひとたちの機会保障につながると考えています。
■Q.特性が異なるひとと一緒に働くうえで、企業や社会に欠けている視点は何でしょうか?
(尾中さん)
多くの企業がいまだに違いや特性を非効率と捉え、効率を重視する視点から脱却できていません。
かつての無声映画スター・チャップリンは、手話ができる耳の聞こえないひとを演技指導者にしていました。「聞こえない=出来ない」ではなく、「自分とは違う能力の持ち主」として力を借りようとした素晴らしい例です。
違いを優劣で判断するのではなく、「どう活かし合えるか」という視点を持つこと。それが、お互いへのリスペクトに変わると信じています。
<小嶌さんへの質問>
■Q.ゴミ問題への解決に企業や自治体を巻き込む上で、一番効果的だったアプローチは何ですか?
(小嶌さん)
「営業」です。ただ、それだけでは他との違いを生み出せません。
良い活動をしているのは大前提として、相手にとって「無視できないデータ(事実)」の提示が効果的でした。
たとえば、「ある地域に落ちているゴミのうち、どの企業の製品が何割を占めるか」というデータや、「東京23区のポイ捨てランキング」を勝手に公開したこともあります。
ランキング最下位になった区からお叱りを受けましたが、結果的に「ああはなりたくない」と考えた他の区から仕事の依頼が来ました。
「相手にとって少し耳の痛い事実」も、社会を動かす原動力になると学んだ出来事です。
■Q.ゴミ処理の仕組みがない海外の地域への対応や、自然に還る容器の開発についてはどのようにお考えですか?
(小嶌さん)
海外でのゴミ処理システムはまだまだ足りていません。今後、わたしたちが現地の廃棄物処理会社を買収し、ノウハウを注入して立て直すアプローチも必要だと考えています。
<平井さんへの質問>
■Q.精神疾患の親を持つ子どもが、声を上げづらい理由は何だと感じていますか?
(平井さん)
社会的な偏見も大きいですが、2つの明確な事実があります。
1つ目は、子ども自身が親の病気について説明されておらず、自分が置かれている状況に「名前」がないため、自認しづらいこと。
2つ目は、親が医療機関を受診していても家族(子ども)を支援する仕組みがないため、子どもが支援につながるまでに10年〜20年のタイムラグが起きてしまうことです。
理由が明確であることは改善への道筋を描けるということです。
つまり、自分の置かれている状況に名前をつけて社会全体で共有し、大人の受診時に子どもへの予防的支援も行う仕組みを作ることが、解決の糸口になると考えています。
<3人への共通質問>
■Q.活動の中で壁にぶつかったり、悩んだりした時はどのように自分と向き合っていますか?
(平井さん)
徹底的に考え抜きます。それでも解決しない時は、信頼するメンターに相談事項を整理して伝えます。また、悩んでいなくても月に1回カウンセリングを受け、状態を客観視する仕組みを作ることでメンタルを安定させています。
(尾中さん)
事業をやればやるほど周りの人に迷惑を掛けている気がして、「もうやめた方がいいのではないか」と悩むこともありました。しかし、現場で子どもたちと接し、彼らが手話で生き生きと表現する姿を見ると、「この子たちに元気なまま社会に出てほしい」という原点に立ち返れます。
(小嶌さん)
悩み、しんどい思いをしている自分に気づいた時、「社会の大きな問題に真剣に向き合っている自分はかっこいいな」と思うようにしています。そう思える機会は人生でも少なく、大切な瞬間です。
■Q.仕事をしながらでも無理なく活動へ関われますか?どのような形で参加できるのか知りたいです。
(尾中さん)
事業を「お寿司」に例えると、聞こえないひとへの支援というネタ(専門領域)は違っても、仕事の進め方などの「シャリ」は共通しています。そのシャリの部分を、皆さんのスキルで手伝っていただけると助かります。
(小嶌さん)
どんな関わり方であれ、「見捨てずについてきてくれること」が一番の期待であり、嬉しいことです。
(平井さん)
活動内容がデリケートなためライトな関わり方の設計は難しいですが、一緒に価値観をすり合わせる「対話」ができると嬉しいです。また、NPOで活動するひとを神聖化せず、フラットに接していただきたいです。
■Q.ビジョンが達成された時、社会はどのように変わり、皆さんの団体はどうなるのでしょうか?
(小嶌さん)
地球上で年間約10兆個ポイ捨てされるゴミに対し、いまテクノロジーで拾えている量は1億個と、10万倍の差があります。この「捨てられるゴミ」よりも「回収されるゴミ」の量が多くなれば勝ちです。20年後にはその逆転状態を作り、ゴミ問題を解決できたら、別の環境問題にチャレンジしていると思います。
(尾中さん)
聞こえない子どもへの専門支援が全国に広がり、聞こえないひとが社会で活躍できる仕組みができれば、目的は達成されます。仮に将来、医療技術が発達して「聞こえないひと」がいなくなったとしても、非言語を言語化した「手話」というコミュニケーションの価値は、社会に残り続けます。
(平井さん)
親が精神疾患になっても、子どもが大きなリスクを負うことなく、当たり前に支援を受けられ、世代間連鎖を予防できる社会になることです。公的な制度と予算が整い、ノウハウが社会に広まった時、もっと最適な団体が他にあれば、役割はそこで終わるのだと思っています。
□終わりに
最終候補者3名の言葉に共通しているのは、客観的な事実(データや現状の仕組みの不備)から目を背けず、それを踏まえた上で『どうやって社会を良くしていくか』というご自身の想い(意見)を明確に持っている点だと感じました。
「違いをリスペクトする」
「耳の痛いデータを開示する」
「現状に名前をつける」
これらは特別なひとだけの手法ではなく、わたしたちが日常の人間関係や仕事をより良くしていく際にも、そっと背中を押してくれるあたたかなヒントになるのではないでしょうか。
▽コモンズSEEDCap応援先の推薦が始まります
2026年1月19日時点で「コモンズ投信の口座でコモンズ30ファンドを保有されている方」は、最終候補者3名のうち1名を応援先として推薦することができます。
推薦資格をお持ちの方には、5月末日までにメールにて推薦フォームのURLをお送りします。メールが届きましたら、ぜひ応援したい候補者をご推薦ください。
◇コモンズSEEDCapとは◇
当社が創業以来続けている、社会起業家支援プログラムです。
わたしたちの暮らす社会には支援を必要とするひとや、解決すべき社会課題が多くあります。SEEDCapは、そうした課題に取り組む社会起業家を応援する仕組みとして、コモンズ投信が受取る信託報酬の1%相当額を寄付し、1年間にわたって広報やイベントなどを通じた伴走型支援を行っています。
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