今回のコラムは前回の続きと言えなくもないのですが、株式市場が
幸いにも「長い下げから力強い上げ」へと全反転した時点で、私が
何を考えているのか皆様にも説明してみます。私は占い師でもなけ
れば、預言者でもないので、TOPIX(東証株価指数)がいくらになる
とか、年末には日経平均株価がいくらになっているとかというコメ
ントは申し上げられません、というか出来ません。
また、そのような数値を口にしてみたとて、皆さまの投資にはお役
には立ちません。どうせ間違うのが関の山ですし、実際、半年も経
てばここに書いたことは誰も覚えていないものです。
ですから口から出まかせの話はしないつもりです。
足元で株式市場が上がり始めると、にわかに楽観論が飛び出してき
て相場追随型のコメントが増えています。この作業は誰にとっても
楽ちんです。
ただ現状を認めて応援歌を歌っていればいいのですから。しかし、
私たちは何回も何回も、株式市場は期待するような足取りパターン
を裏切ってきたことを知っています。
そうかといって只今現在せっかく大きく反転した強い市場にケチを
つけるようなことをするつもりもありません。
私は株式市場と向き合ってきた長い経験がありますが、あまり根拠
もなく実証もできないコメントを出すことを避けてきました。
そして、一生懸命に「相場はなぜ高いか」を解説することもして
いません。
「すべてが説明出来たら、もうその相場は終わっている」という
ことです。これは故М先輩の残したお言葉です。
今回の株式相場の反発は2月の上旬、円相場が対ドルで76円台を
脱出したころから始まったと認識しています。原因はそれだけでは
ないでしょう。しかし、象徴的な出来事をきっかけと考えれば円高
局面の終了がわかりやすいイベントでした。
2月7日(火)を76円台の最後の日として、以降一度も77円
を割っていません。
それどころか3月中旬には円は84円に接近しています。自分の持
っている株が上がれば人間誰でも気持ちが明るくなります。
資産効果という心理がはたらくのです。丁度、雨がやんで日が照っ
てきたら急に気持ちが明るくなるようなものでしょう。
私たちの言葉でいえば、「世の中の動きが、悪循環vicious
cycleから、好循環virtue cycle に変わった」
ということです。
原因は、あとでわかることですが、日銀の政策変更でもあり、
アメリカの金融緩和でもあり、ユーロ圏の危機の鎮静化でもあっ
たのです。円安への転換も何かのきっかけ待ちと長い間言われてき
ましたが、それが実現したのです。しかし、ほかに絶対忘れてはな
らないこと。それは企業業績が好調になっていることです。
私としては企業業績の裏付けがない相場は長くはもたないと思って
います。たとえ東北の震災があっても、円高であっても、企業は必
死になって収益を出そうとして、2012年3月期の経常利益は
前年度比-15%程度に収まりそうです。2013年3月期について
は、もし円が83円とか85円で推移することが出来れば前年度比
+29%以上の利益成長が期待できそうです。
そして、今まで大幅に売り越してきた外国人投資家が逆に買い越し
に転じました。市場での資金需給がマイナスからプラスになった時
のインパクトは大きいものです。
強気相場は懐疑の中で生まれます。
今まで「まさか、そんなことはないよ」と懐疑的だった投資家は
大きく裏切られ動揺しています。
これが「強気相場ハジマリ、ハジマリ」のドラマでしょう。
ただ、弱気相場を裏付けていた弱い材料が無くなったわけでは
ありません。
株式相場が反転すると弱い材料は、今度は強くなるということが
あります。そこで、弱かった材料を忘れないためにここで、何が
どうだったかおさらいしてみたいのです。
国際競争力は落ちています。
電機業界は円高とコストダウン、市場への対応の面で韓国勢に負け
ました。円安は好材料ですが、経営のスピードなどが異なる外国勢
に太刀打ちできるかどうか、まだわかりません。
国外で設備投資をすることが今の日本企業のキーワードですが、
コスト高の国内投資、国内雇用が好転するかは、いまだわかりませ
ん。安い労働力を輸入しないで、高コストの日本人を雇用している
習慣が変わるかどうかもわかりません。
さらに加えれば、政府が財政赤字を削減できるチカラを持っている
か疑問です。日本にはマーガレット・サッチャーはおりません。
あれこれあげつらいましたが、慎重な見方は「今の株式相場の上昇
は単に世界的金融緩和の副作用にすぎない」と冷ややかな向きも
あるのです。
ポジショントークと言いますが、今株式をどっさり抱えている投資
家は強気な見方をするでしょう。証券会社も強気になります。
一方で、キャッシュを持っている投資家は慎重でしょう。お互いが、
それぞれの立場で相場を語るので、結論は相場観には客観性がなく、
トレンド追随かポジショントークかというところにおちついてしま
うのです。もうひとつの結論は、企業業績を根拠に投資していれば、
多様な相場観の渦巻きに巻き込まれないで済むと言うことです。
幸い四半期ごとに会社四季報が出ています。便宜的かつカンタン
すぎるかもしれませんが、増配予想銘柄のページに注目するだけで、
かなりの成果が期待できます。

3月21日にソニー銀行さま向けに執筆したコラムより。

                              (運用部 吉野)

どうにもトリッキーな(誤解を生むような)タイトルになりました。
しかし、日頃思うことを率直に披露するのが私の務めだとすれば、
最近の一連の世界環境変化とそれに伴う市場の反応や、投資機会の
増加などに言及しなければならないでしょう。
17年にも及ぶ長いデフレの時期にいつもおかしいなと思っていたこと、
それは、個人投資家の皆さんから特にご質問の多い「間もなくインフレ
が来るのではないでしょうか?どのように思いますか?」という発言
でした。歴史はデフレとインフレが交互に、あたかも好景気と不景気が
織りなすように、我々の生活を襲って来ます。個人の生活者にとっても
運用者にとっても物価のトレンドの変化には留意しなければなりません。
近年、私としては、デフレ脱却に四苦八苦している政府や企業を、
そして消費マインドなどを見ていて、デフレからの脱却は容易ならない
と理解していましたので、インフレ期待?の質問は実に唐突に感じて
いました。
個人投資家の皆さんは、いつも敏感ですし、過去のインフレ時代に多く
の経験も重ねています。それゆえ、資産運用セミナーで講師がインフレ
を煽って、聴講生に強くアピールしたかったのではないか、こういう講座
もある種の doomsday sayer , つまり「大変だ、大変だ、地球が滅び
る。と触れて回る人たち」、ではないだろうかと勘ぐってすらいました。
その是非はともかく、インフレは多くの人々を刺激するようです。
善意の個人聴講生が繰り返しオオカミ少年もどきにインフレを説く
講師にすっかり影響されているように感じていました。
デフレもインフレも原因を追及すると複雑な要素が絡み合って
いますが、単純に考えてみますと、デフレは金利、物価、株価の
3点セットの下落と言えるでしょう。
そしてインフレはその逆です。インフレは投資、お金儲けの機会でも
ありますが、また貨幣価値の下落という結果を招いて、悲惨な目
にも遭っています。
私たちの世代は戦後のインフレを経験していますが、それはとても
困ったものでした。
昨日100マルクだったパンが今日は1000マルクそして明日は
10000マルクという、ドイツの戦後のハイパーインフレはあまりにも
有名です。デフレもインフレも必ず行きすぎる。そして人々を
苦しめる。
人々が期待するのはモデレイトな(ゆっくりした)インフレではある
ものの、そのような理想的な経済は絵に描いた餅ではないかと
思うのです。
インフレになってしまうと、それを終息させるのが至難ですが、ドイツ
のブンデスバンク(中央銀行)はインフレと戦うのが使命とばかり、
土地リンクの通貨などを発行、緊縮政策を導入して、貨幣価値を守り
ました。
今の日銀もきっとそういう使命感(貨幣価値の守り神のような)に燃えて
はいるのでしょう。
一方、景気を良くして国民のくらしを楽にしたいと願う政府は、日銀の
「紙幣の追加印刷を渋る」という頑なな態度に業を煮やしています。
どこの国でも必ず起こる政府と通貨当局との軋轢なのです。私は政府と
日銀が角突き合うのは、昨今の景気の八方ふさがりの時期には
「いい加減にやめてください」と言いたいのです。
海外の諸国を見ても政府と通貨当局は知恵を出して連携しながら経済
政策を模索しています。もはや主義主張ばかりを唱えている場合では
ないでしょう。
主要国の通貨当局がインフレターゲット(許容できるインフレの目標)を
2%に設定している中で、2月中旬に日銀は曖昧な表現ながら、そのター
ゲットを1%に設定した模様です。
このような書き方をしたのは日銀が断固としていないからです。
メドとか目安とか、表現があいまいなのです。どうして日銀はdecisive
(断固とした)な態度を示せないのか。この無難な表現を諸外国は苦笑い
しているような論評がありました。その上、言葉の違いを認めて結局
腹の中はインフレターゲットのことだよ、と言いたいようですが、どうも
今後インフレに見舞われたときに「そのきっかけを作ったのは
日銀だった」と言われたくないように思えてしまいます。
どのみちリスクがあるのにリスクを避けようとする態度がレトリック
(言葉のあや)の使い回しになっていることは、国民にもわかってしまい
ます。
私たち個々人は特段投資の才能があるとも思われませんが、
マーケットは天才です。
株式市場は日銀の「インフレターゲットもどき」の設定にすぐさま
反応しました。私自身第7回のコラムで取り上げた「2012年の
サプライズ」の一つは“3%のインフレターゲット”の設定でした。
ゆえにとうとう来たかと、その日の朝、新聞を広げてちょっと
感無量でした。
誰もインフレを望みませんが、誰もがデフレという長いトンネル
から抜け出したいと思っています。
ですからきっとインフレを呼び覚ますターゲットの導入は苦渋の
選択と言えるかもしれません。
経済政策とはこうやってバンドエイドをつぎはぎしながら試行錯誤
でやっていくのだろうなと思っています。
そこで、どうやら日本経済も方向が定まってきたような気がします。
西洋に「一羽のツバメが飛ぶのを目撃したからといって夏が来たわけ
ではない」という趣旨のことわざがあります。
その伝でいくと、私も日銀がインフレターゲットを導入したからと
いってインフレが来るわけではないと思います。しかし、デフレ時代
が終わるきっかけになるかもしれないと期待はしたいのです。
あれこれ考えてみますと、これから国内投資が回復して、さらに消費
も刺激され、若い人の雇用の機会が増えるという景気の好循環の入り
口に到達したのかもしれません。

                                (CIO吉野永之助)

クリスマスも終わり、いよいよ今年も大詰めに入りました。
2011年は最初の滑り出しこそなかなか好調でしたが、3/11
の震災以来、社会もマーケットも実に多事多難でした。こんな
状況だからこそ、来年へのしっかりした展望を持ちたいもの
ですね。
こうした中、日経CNBCさんからタイムリーなリクエストが
あり、コモンズのファンドマネジャー吉野永之助が2011年を
もう一度総括しながら新年への展望を、いつものように注意深く、
そして明るく見通します。吉野の信条である、
“cautiously optimistic”(慎重でありながら楽観的)なコメント
が出るのでしょうか・・・。
今回の番組でパートナーをつとめてくださるのは、三菱
UFJモルガン・スタンレー証券でチーフストラテジストとして
ご活躍中の芳賀沼千里さんです。さて、どんな展開になるで
しょうか・・・。乞ご期待です!
明日27日から29日までの間、下記の時間帯に日経CNBCの
日米マーケットリレー 朝エクスプレス」で放送予定です。
今年を冷静に総括し、新年を前向きに迎えるためのご参考に
なればと思います。
(注:日経CNBCの番組をご覧いただくには契約が必要です

http://www.nikkei-cnbc.co.jp/program/asa/ が、上記の時間帯

TV東京のMプラスでもご覧いただけます(^o^)丿)

【番組のご紹介】
日米マーケットリレー 朝エクスプレス
放送:午前8時30分~午前10時
放送予定日: 12月27日(火)~12月29日(木)
コーナー名:  「コンパス」 (放送時間帯9:10~9:18)
~2011年試練の相場回顧と2012年の展望~
(マーケティング部:長井)